トランプ勝利を歓迎するトルコのエルドアン大統領
ラッカにおける対IS作戦を見据える両国
最後にシリア内戦をめぐる現在のトルコとアメリカの関係についても触れておきたい。以前このコラムでも触れたように、トルコは今年の8月24日以降、シリアにおいてISの排除とPYDおよびYPGの勢力拡大阻止を目指し、「ユーフラテスの盾」作戦を実施している。ISの排除という点に関しては、トルコおよびトルコが支援する自由シリア軍、アメリカ、ロシア、PYDおよびYPGも利害が一致している。そして、現在焦点となっているのは、ISの本拠地、ラッカ攻撃に際し、上記したアクターが足並みを揃えることができるかという点である。
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エルドアン大統領は、当初、「テロ組織とは共闘できない」として、PYDおよびYPGとの共闘に難色を示した。しかし、11月6日にアンカラでトルコのフルス・アカル統合参謀総長とアメリカのジョセフ・ダンフォード統合参謀総長が4時間半にわたり会談し、両国がラッカ攻撃で協力することで合意した。
ここでは、(1)PYD、YPG、YPGとアラブ人からなるシリア民主連合(SDF)というトルコがPKKと同一視するクルド勢力がラッカを占領することにアメリカは同意しない、(2)自由シリア軍とトルコ軍が展開しているアル・バーブにおけるアメリカの支援、(3)北イラクのニーナワー県スィンジャールへのPKKの進出の阻止、が確認された。このように、両国はラッカの対IS戦に向け、クルド勢力の処遇に関してわだかまりを残しつつも一応足並みは揃えた。
トランプの大統領就任とラッカの対IS戦に向けたアメリカとの協調は、トルコの外交にとって追い風となっているように見える。しかし、いまだにトランプ政権の外交は不透明な部分が多く、しばらくの間、両国関係は手探りの関係が続くことになるだろう。
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