天津爆発関係者死刑判決――習近平暗殺陰謀説は瓦解
陰謀説論者は、爆発が夜半であったことから、室内の温度は下がっているはずで、誰かがコンテナをこじ開けて放火でもしない限り「自然発火」はあり得ないと強く主張している。だから、近くにある主要幹線道路を通ることになっていた習近平を暗殺するために、夜中に実行犯が倉庫領域に侵入して放火したのだとしている。
これらの主張は、膨大な証拠と自供、および科学的事実の前には無力だ。
権力闘争説が導く過ち
この例一つをとっても、「権力闘争説」という色眼鏡をかけて中国を分析すると、とんでもない判断ミスを招くことがお分かり頂けるだろう。
権力闘争論者たちは、いま中国がどれほど「底知れぬ腐敗の泥沼の中にあるか」を見えなくさせ、習近平政権の真の弱点がどこにあるのかを覆い隠してしまう。
それは、娯楽として日本国民を楽しませることはあっても、決して日本国民に利益をもたらすことはないだろう。優秀なはずのジャーナリストやチャイナ・ウォッチャーの目が曇っていくのも惜しい。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。