ペルーAPECで習主席FTAAP強調――北京ロードマップ
一方、FTAAPはもともと2004年にカナダが提案したもので、2006年のAPEC首脳会議で「FTAAP構想に関する研究」を開始したときには、アメリカ(ブッシュ政権)は最も積極的にFTAAP構想を支持していた。東アジアで経済統合の動きが加速し続ければ、アメリカが排除された形での大経済圏が構築されることへの懸念が、当時のアメリカにはあったのだろう。ところが、その後、FTAAPには米中ともに加盟するので、「米中がFTA(自由貿易協定)を結ぶことにつながる」として、アメリカは「中国を排除したTPP締結」の方に舵を切ったと中国は認識している。
その後の中米関係は、急激に冷え込んでいくのである。
こういった流れと、ここ数日間のCCTVの報道、およびAPECでの習主席の発言を総合すると、中国には以下のような戦略があることが浮かび上がってきた。主としてCCTVの報道から分析するので、報道通り敬称は省略する。
1.安倍はアメリカがTPPから脱退すれば、世界はRCEP(東アジア地域包括的経済連携)を中心に動くだろうと心配している。RCEPには日本も加盟しているが、参加16カ国(東南アジア諸国連合10カ国、中国、日本、韓国、インド、オーストリア、ニュージーランド)の中で、GDPで最も抜きん出ているのは中国。だから中国を中心に世界が動き始めると、安倍は焦っている。
2.事実、TPP構想が崩壊するのを恐れたペルーは、中国に接近してRCEP加盟の意思を表明している。マレーシアもベトナムも同様だ。だから中国がRCEPで実力を発揮するのは事実だ。
3.したがって中国はもちろんRCEPを推進してはいくが、しかしTPPに対抗し得るのはRCEPではなく、FTAAPである。RCEPはアメリカを排除しているので、アメリカがTPPに代わる、「中国を排除した」他の自由貿易圏を構築しようとしたときには、オバマ政権時代後半と同じになってしまう。それは別の形での経済的な対中包囲網の到来を招く。
4.だからこそ習近平はリマAPECで、他国を排除しないFTAAPの推進を断固、強調したのである。FTAAPにアメリカが入っていることが「ミソ」で、TPP締結の可能性が薄れ、アメリカの次期政権が保護貿易の傾向に動く今だからこそ、中国主導型のFTAAP推進が重要なのである(中国の報道では、あくまでも「FTAAPは中国が主導する北京ロードマップ」と位置付けられている)。
背景には発展途上国「77カ国グループ」戦略
習主席の「拉美之行」は「中南美之行(中南米の旅)」であり、エクアドル、チリそしてペルーに到る旅路の先に描いているのは「太平洋の両岸にまたがる77カ国グループをまとめあげる構想」だと、CCTVは解説した。