最新記事

貿易

ペルーAPECで習主席FTAAP強調――北京ロードマップ

2016年11月21日(月)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 ニューヨーク時間の11月17日、安倍首相とトランプ次期大統領との会談が非公開で行われた。選挙中に日本を悪しざまに罵倒したトランプ候補者の顔は消え、非常に友好的だったようだ。安倍首相はトランプ氏を「信頼に値する人」と評価している。

 中国はこの会談に関して批判的で、CCTVでも、「安倍・トランプ会談」特集を何度も組んで、つぎのように報道した。

 ●ヒラリーが当選すると思っていた安倍は、トランプの当選に慌てふためき、一刻も早くトランプに接触して、トランプ新政権の人事が決まる前に、トランプを説得しようとした。

 ●大きな目的は二つ。一つは「日米安保関係がアメリカにとっても、いかに有利で重要であるかを説得すること」で、二つ目は「TPPから脱退することは、中国の存在を強化するので、どうかTPPから脱退しないようにと懇願すること」だ。

 ●中国は、日本のようにアメリカに依存していないので、安倍のような「朝貢外交」などをする必要がなく、泰然と自分の方針を貫くだけである。

 ●海外メディア、特に日本メディアは「習近平が出遅れた」といった類の論評を強めているが、それはあまりに視野の狭い分析で、見当違いだ。


「太平洋の両岸」にまたがる「G77+China」構想

 中国に関して「両岸問題」と言えば台湾海峡を指すというのが、これまでの常識で、それは「一つの中国」を大前提として、「大陸と台湾」の中台問題のことであった。

 ところが最近、中国政府関係者の間では別の「両岸」という言葉がしきりに交わされており、またCCTVなどでも頻繁に、もう一つの「両岸」が取り上げられている。

 この「両岸」とは、世界の開発途上国である「77カ国」を結びつける「太平洋の両岸」である。

 日本あるいは中国を中心に世界地図を描いたとき、海を隔てた南半球平面図の左端にあるのはアフリカ大陸であり、右端にあるのは南米大陸である。そこにはまさに、いま習主席が「中南米の旅」として位置づけているラテンアメリカがある。習政権になってから習主席は合計3回ラテンアメリカを訪問しており、訪問したラテンアメリカの国の数は10カ国に上るという。ラテンアメリカ諸国の指導者らも頻繁に中国を訪問し、2015年1月には中国・ラテンアメリカフォーラム第1回閣僚級会議が北京で開かれた。

 アメリカの裏庭を、中国がしっかりつなぎとめているのである。

 トランプ氏と会うのは、この地盤をさらに強固にしてからの方がいいと中国は判断している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマーで総選挙投票開始、国軍系政党の勝利濃厚 

ワールド

米北東部に寒波、国内線9000便超欠航・遅延 クリ

ワールド

米、中国の米企業制裁「強く反対」、台湾への圧力停止

ワールド

中国外相、タイ・カンボジア外相と会談へ 停戦合意を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 3
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌や電池の検査、石油探索、セキュリティゲートなど応用範囲は広大
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 6
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 7
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 8
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 9
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 10
    【クイズ】世界で最も1人当たりの「ワイン消費量」が…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中