ハロウィンのコスプレは法に触れる可能性があります
オモチャの武器を持ち歩くことの制限
ハロウィンのコスプレに添える「持ち道具」について、リアリティを追求しすぎるのも考え物である。
たとえ刃が付いておらず、物を斬ることはできなくても、金属製で、実際の刃物と著しく似ている外観ならば、銃刀法で規制されている「模造刀」として携帯が禁止される。
たとえ発砲できなくても、金属製でピストルに著しく似た外観ならば、「模造けん銃」として、携帯どころか、入手することすら禁じられている(銃身を完全にふさぎ、模造品であることが一目で分かるよう、外側を白か黄に着色する処理を行わなければならない)。
また、明らかなオモチャであっても、武器に似たものを夜間に持って街中を歩いていれば、不審者として通報されて職務質問を受けたとしてもやむを得ないだろう。
なお、福岡県に限っては、中に爆薬などが入っていなくても、実際の手榴弾などと著しく似ている「模造爆発物」を公共の場所に放置する行為を処罰するルールがある(福岡県迷惑防止条例7条の2、11条2項、12条1項)。
本物そっくりの手榴弾を携帯して歩いているだけなら、福岡県内でもギリギリ処罰の対象外である。だが、警察の職務質問を受けるおそれは拭い去れない(その点は他の都道府県でも同じ)。
あまりに巨大なコスプレの制限
人々の目を惹こうとするコスプレ競争が、このままエスカレートしていけば、まるで紅白歌合戦の大物演歌歌手の衣装のごとき巨大なコスチュームを着た人が街に出現しかねない。
公道の上で、身体よりも遥かに大きな衣装を着用して現れたり、街中を移動したりすることは、その規模にもよるが「石碑、銅像、広告板、アーチその他これらに類する工作物を設けようとする者」、あるいは「一般交通に著しい影響を及ぼすような通行の形態若しくは方法により道路を使用する行為又は道路に人が集まり一般交通に著しい影響を及ぼすような行為」に該当しうる。
そのため、道路使用許可を事前に警察署へ申請しなければならない場合もあるだろう(道路交通法77条)。その限度で、ハロウィンのために皆を驚かせようとして、巨大なコスチュームを着て街を出歩く自由は、法的な制約を受ける。
【参考記事】パーティーが多過ぎる不思議
祭りの日には、非日常の雰囲気を精一杯楽しむべきで、日頃のストレスを発散できる貴重なチャンスである。だが、せっかくの楽しい雰囲気をぶちこわさないよう、ハメを外しすぎないことも重要だ。
また、極端に人が集まれば、ゴミの処理も追いつかなくなる。せめてハロウィンの日だけでも、自分で出したゴミを持ち帰れるよう、とっておきのコスチュームと並行してゴミ袋を準備したいものだ。
[筆者]
長嶺超輝(ながみね・まさき)
ライター。法律や裁判などについてわかりやすく書くことを得意とする。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。2007年に刊行し、30万部超のベストセラーとなった『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)の他、著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)――こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。ブログ「Theみねラル!」