がん治療にまた新たな希望 免疫療法で製薬各社の競争加速
肺がんは、がんの中でも最も死者数が多く、年間の死亡者数は160万人に達する。今後の免疫療法薬の処方例でも肺がんが圧倒的に大きなシェアを占めることになることが見込まれる。もっとも免疫療法は、これ以外にも黒色腫、ホジキンリンパ腫に加え、胆嚢・腎臓・頭頸部のがんにも用いられている。
肺がんに対する単剤療法においてはメルクが市場を席巻しようとしているが、医師たちは次の段階に注目している。PD-L1レベルの低い残りの患者に関しては、療法の併用が今後の道だろうというコンセンサスが形成されつつある。
仏グスタフ・ルッシー研究所のジャンシャルル・ソリア医学教授は、多剤併用療法市場における優位をめぐる今後の競争について、「もちろん、レースは始まっている」と語る。
研究者たちは、理論上は、他の薬を追加することによって免疫系にがん細胞を反撃させ、もっと多くの人々に治療効果をもたらすことは可能だと考えている。
これまでのところ、最大の関心が注がれているのは2種類の免疫療法を組み合わせることだが、通常はそれぞれの薬に年10万ドル─15万ドルの費用がかかるため、コスト面での問題が浮上してきた。
多剤併用療法という戦略によって、アストラゼネカにもチャンスが生まれてきた。同社はこれまで他社の後塵を拝してきたが、来年早々に臨床試験の結果が報告される混合薬によって、ライバルを一気に追い越したいと願っている。
ブリストルも同じアイデアを追求しているが、こちらの2剤併用免疫療法の臨床試験の結果は2018年まで出ないと予想されている。
ところが、ESMOの総会では、もう1つ別のアプローチ、つまり免疫療法と化学療法をうまく併用させる可能性も浮上してきた。
過去には多くの科学者がこのアイデアに懐疑的であり、現在でも、患者が長期的な反応を示すかどうかという点で疑問が残っているが、ESMOで紹介された中期研究から得られたポジティブなデータからすれば、このコンセプトには現実的な見込みがあるようだ。ロシュ、メルク両社も熱意を示している。