最新記事

マレーシア

ナジブ首相の足をひっぱるマレーシアのイメルダ夫人

2016年10月18日(火)16時46分
大塚智彦(PanAsiaNews)

 9月14日の地元マスコミネット版にはロスマ夫人の写真が大きく掲載され、その写真に写る腕時計とイヤリングが拡大され「腕時計=250万リンギット(約61万7000円)、イヤリング=50万リンギット(約12万3000円)」との大きな見出しがつけられて報じられた。さらに米紙WSJの報道を引用する形で「最近数年間のクレジットカードの支払いが600万米ドルになった」「2008年から2015年までに洋服、靴、宝石をロンドンのハロッズ、ニューヨーク5番街のSaksなどで少なくとも600万ドルを支払っているその額と同じである」「この金額の一部には1MDBの資金が流用されている可能性がある」「夫人自身には定期的な収入はない」などと指摘して、ロスマ夫人にまつわる疑惑を報じた。そしてロスマ夫人のお気に入りブランドが「エルメス・バーキンのハンドバッグ」であるともNYTは伝えた。

 このほかにNYTはロスマ夫人には米ニューヨークにあるタイムワーナーセンターのペントハウス(約3000万ドル)、ロスアンゼルスのLAヒルズにあるマンション(約3900万ドル)などを含む約10億ドルの資産があるとも報じている。

夫唱婦随のスキャンダル、疑惑

 ナジブ首相が副首相時代の2008年6月にはネットニュースの編集者が「ナジブ副首相夫人のロスマ女史が殺人現場に居合わせた」と指摘、殺人事件への関与疑惑が浮上したこともある。しかし副首相側が政治的陰謀として全面否定したが、ロスマ夫人は警察の事情聴取を受けたとされている。

 また2015年8月には「首相夫人がマレーシア中央銀行総裁の追放を画策」などと人事への口出し疑惑を報じたアジア・センティネルの記者に対し「ロスマ夫人に対する48時間以内の無条件、自発的全面謝罪」を求める警告が夫人の顧問弁護士から出される事件も起きた。これは首相夫人の地位を利用して政治に介入しようとしたロスマ夫人を追及する報道に「過剰反応」を示したことで、逆に疑惑を深める結果となった事例だ。

 今年4月に開かれたバドミントンのマレーシア・オープン決勝戦でマレーシア・バドミントン協会の強力な後援者として優勝選手への賞贈与者としてロスマ夫人の名前が場内にアナウンスされると約1万人の観衆から盛大なブーイングが沸き起こった。さらに8月にはクアラルンプール市内で開かれた政治腐敗追及のデモでは参加者から「ロスマ夫人の金銭疑惑の解明」を捜査当局に求める声があがるなど、世論は次第により厳しくなりつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル、ハマスが人質リスト公開するまで停戦開始

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中