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タイは麻薬撲滅をあきらめて合法化を目指す?

2016年10月8日(土)09時20分
パトリック・ウィン

 現状では犯罪組織が価格を設定して品質を管理しているが、合法化されれば政府の管理下に置かれ、衛生的な環境で純度の高い薬物が製造されるようになる。高い税金を課すこともでき、使用をコントロールできない依存症者の治療に税収を充てることもできるだろう。

 もっとも当局によれば、一気に合法化に突き進むのではなく、より穏当なポルトガル方式が取られる可能性が高い。少量の所持や使用は犯罪扱いしないが、密売組織は厳しく取り締まるというものだ。大麻とクラトム(大麻同様、幻覚作用がある植物)も合法化が検討されている。

【参考記事】親中路線に舵を切り始めた放言ドゥテルテの外交戦略

 タイが麻薬の合法化を検討する最大の理由は、刑務所の定員オーバーだ。人口に対する刑務所入所率でタイは中国を上回り、ロシアと肩を並べる。服役者の多くは非暴力的な薬事犯で、薬物使用を合法化すれば刑務所の過密は解消する。

 今のところ法相の構想が実現するかは不透明だ。タングアイは「実施されたためしのない政治家の約束」にすぎないとみる。

 それでも議論を喚起したことは評価できると、彼は言う。現実的な麻薬対策がこれほどオープンに語られることは、いまだかつてなかったのだから。

From GlobalPost.com特約

[2016年10月 4日号掲載]

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