国際刑事裁判所(ICC)を脱退するアフリカの戦犯たち
ブルンジはICCから脱退する最初の国だが最後の国ではなさそうだ。アフリカの独裁者たちは以前から、ICCが自分たちを標的にしていると不満を抱いてきた。これまで人道に対する罪や戦争犯罪でICCに裁かれ有罪になった4人の被告人は、全員がアフリカ出身だ。9月にはマリ出身のイスラム過激派の元戦闘員アフマド・ファキ・マフディが、西アフリカのマリ北部を一時制圧していた2012年に世界遺産都市トンブクトゥの文化財を破壊した戦争犯罪に問われ、ICCが禁固9年の判決を言い渡した。
6月にはアフリカ中部コンゴ(旧ザイール)の副大統領だったジャンピエール・ベンバが、2002年に中央アフリカに派遣した自身の部隊が犯した戦争犯罪と人道に対する罪で、ICCに禁固18年の量刑を言い渡された。ベンバは判決を不服として上告している。ICCが進行中の3件の裁判すべてにアフリカ出身者が関わっており、裁判に向けて予備調査が進んでいる10件のうち9件もアフリカ諸国に関連する事案だ。
アフリカからの反発が強まる中、ブルンジの次にICCを脱退する可能性があるのはどの国だろうか。
スーダン
ICCの被告人の中でも最高位の指導者といえば、スーダンのオマル・ハッサン・アハメド・バシル大統領だ。ICCは2009年3月、現職の国家元首に対しては初の逮捕状を発行した。ICCが指摘したバシルの容疑は、戦争犯罪や人道に対する罪、ダルフール地方での大量虐殺だ。スーダン西部のダルフールで2003年にアラブ系の中央政府に対抗して黒人の住民が蜂起して始まったダルフール紛争は、死者が数十万人に上ったと推計される。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは、スーダン政府軍が住民に対して化学兵器を使用した疑いが強いとする報告書を発表したが、スーダン政府は否定した。
バシルは4月、逮捕状は無効だと一蹴したうえ、ICCは「政治利用された法廷」だと批判した。アフリカ諸国はICCの逮捕状発行を無視するかのように、バシルの自国訪問を歓迎している。最も注目を集めたのは、2015年6月に南アフリカで開催されたアフリカ連合(AU)首脳会議だ。ICC加盟国である南アフリカの裁判所が出国禁止命令を出したにも関わらず、バシルは出国を認められて易々と帰国した。