EU離脱でイギリスの銀行の影響力凋落、政府も耳貸さず
メイ首相が今月ハードブレグジット寄りの姿勢を示したことは、銀行業界に衝撃を与えた。
「金融サービスを取り巻く環境が変わったのは間違いない」と言うのは、ある国際銀行の上席幹部だ。政府が銀行を見る目が「180度転換した」という。
別の銀行関係者は、政府は特定の産業を特別扱いしないと言いながら、英国のEU残留を強く支持してきた日産自動車には宥和的な姿勢を示しており、金融業界に対する厳しい態度とは対照的だと話した。
ロビー攻勢が裏目
金融業界は英国内総生産(GDP)の約1割を占め、年間600億ないし670億ポンドの税金を納めている。業界団体「ザシティUK」の委託で行われた調査によると、ハードブレグジットになった場合、業界の収入は最大380億ポンド減り、英国は7万5000人の雇用を失いかねない。
しかし4カ月間にわたる銀行のロビー攻勢も、一部で裏目に出ているのが実態だ。
財務省はEU離脱交渉における優先順位を決めるため、異なるシナリオ下で各業界の収入や雇用、納税にどのような影響が及ぶかについて徹底的な調査を行っている。政府高官らによると、銀行はそのスケールが分かっていないという。
ある関係者は、金融機関は呆れるほど多くの要求リストを持ってきて、自分たちの意見に耳を貸してもらえないとすぐに切れるとこぼす。
金融業界が過去に発した警告は結局現実化しなかった、という思いも高官の間にはあるという。
世界金融危機の後、多くの銀行は税金を上げたり規制を厳しくしたりすれば海外に拠点を移す、と政府を脅した。その前には、英国がユーロに加盟しなければロンドンが国際金融センターとしての地位を失うと警鐘を鳴らしていた。
政府高官らと話したあるバンカーは「政府は今度こそ影響を過小評価している。こけ脅しじゃないんだ」と訴える。