最新記事

インタビュー

法のスキルを活用し、イノベーションを創出しやすい環境を作る

2016年9月22日(木)07時35分
WORKSIGHT

人、モノ、コトが邂逅する環境を生み出したい

 コンテンツ分野のリーガルサービスからスタートして、今やハードウェアや建築・不動産まで幅広く請け負っているわけで、何をやっている弁護士なのかわかりにくいとよく言われるんですが(笑)、俯瞰してみると僕の活動の基軸にあるのは、さまざまな有形無形のリソース(資源)を権利からいったん解きほぐして整理し、流動化させることで、人、モノ、コトが邂逅するような環境を生み出したい、ということなんだろうなと思います。ブリ・コラージュを生み出す環境をいかに作るか、ということです。

 既存のリソースを流動化して、いかに有効な利活用につなげていくか。それを法的な視点から支援するのが僕のミッションなのかな、と。

 最近の事例では、公益財団法人「ジョイセフ」と建築家・遠藤幹子さんの国際協力プロジェクトである、ザンビアの「マタニティハウス」のデザインガイドブックについてクリエイティブ・コモンズ・ライセンス取得をサポートしました。***

 単純にウェブ上にアップしているだけだと「オールライツリザーブド」、いわゆるマルにCの表記で表される「著作権保有」の状態と見なされ、転載・複製・翻訳など無断で行うことはできません。しかしクリエイティブ・コモンズ・ライセンスをつければ利用条件がクリアになって、そのコンテンツを利用したいユーザーが扱いやすくなり、より流通を促進できると考えられます。クリエイターの権利を尊重しつつ、作品をシェアしやすい環境作りに役立つわけです。ある種のブランディングにもなりますし、オープンなコミュニティへの参加表明にもなり得るでしょう。

 このほかに僕がライセンスデザインを手掛けた案件としては、ボーカロイドソフト「初音ミク」のキャラクターイラストのCCライセンス対応、顧問を務める山口情報芸術センターのアーティストとの共同研究開発契約書を含む一連のオープン化**** 、森美術館などでの一部展覧会での写真撮影許可などがあります。

 もちろん、すべての創作物にクリエイティブ・コモンズ・ライセンスをつけるべきだとは言いません。オープン化はやり方次第では知財の流出につながりかねませんし、僕自身、コアの技術やコンテンツを排他的・独占的な方向に持っていく作業も弁護士として多く請け負っています。ただ、今の時代ネットを通じてのオープン化がもたらすメリットはクリエイターや作品をシェアするユーザーだけでなく、広く社会にまで影響を及ぼすのではないかと考えています。そのコンテンツがオープンになりたがっているのか、クローズド(権利保護)を志向しているのか、コンテンツの本質を突き詰めて考えることが重要です。

【参考記事】資本主義の成熟がもたらす「物欲なき世界」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午後3時のドルは154円台を上下、トランプ関税や日

ビジネス

英企業信頼感、1月は1年ぶり低水準 事業見通しは改

ビジネス

基調物価の2%上昇に向け、緩和的な金融環境を維持=

ワールド

米運輸長官、連邦航空局の改革表明 旅客機・ヘリ衝突
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 7
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 8
    空港で「もう一人の自分」が目の前を歩いている? …
  • 9
    トランプのウクライナ戦争終結案、リーク情報が本当…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のアドバイス【最新研究・続報】
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 5
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中