最新記事

フィリピン

アブサヤフのテロに激怒、ドゥテルテ大統領がまた殺害容認か

2016年9月5日(月)16時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

正念場を迎えるドゥテルテ

 麻薬犯罪者の殺害容認という強硬策、さらに中国との間に存在する南シナ海の領有権問題など山積する課題に加えて、ドゥテルテ政権は国内のテロ対策、過激組織との対決という難問を改めて突き付けられた形となった今回の爆弾テロ事件。自らの地盤でもある御膝下のダバオで、それも大統領が滞在中を狙った犯行だけに、ドゥテルテの面目は丸つぶれとなった。

 国軍・警察によるアブサヤフの大規模壊滅作戦が密かに準備されているようだが、地元メディア関係者によると「(アブサヤフの)メンバー、関係者などで抵抗するものに対しては殺害をためらうな」という指令が出る可能性があるという。そうなると麻薬犯罪者への「殺害容認」と同じことになり、無関係の市民や女性子供までも巻き込む「超法規的殺人が横行する無法状態」がさらに深刻化する危険性をはらんでいる。

 9月6日からラオスで始まるASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議では南シナ海の中国の派遣問題とともにテロ対策も協議される可能性も出てきている。本格的な外交デビューを飾るドゥテルテ大統領はバラク・オバマ米大統領や安倍晋三首相、ASEAN加盟各国との首脳会談では国際的に批判を浴びている「麻薬問題に対する強硬姿勢」への理解とともに「テロ対策」での意見交換も予想され、国際社会、地域社会をどこまで味方に出来るか、手腕を試される正念場となるだろう。

【参考記事】どう動くのか中国、南シナ海の判決受け

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カイロでのガザ停戦交渉に「大きな進展」=治安筋

ビジネス

NY外為市場=ドル全面安、週内の米指標に注目

ワールド

デンマーク国王、グリーンランド訪問へ トランプ氏関

ワールド

米・ウクライナ鉱物協定案「より強固で公平に」=ゼレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 3
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 4
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    トランプの中国叩きは必ず行き詰まる...中国が握る半…
  • 8
    体を治癒させる「カーニボア(肉食)ダイエット」と…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    【クイズ】米俳優が激白した、バットマンを演じる上…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 5
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 4
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中