最新記事

医療

ナノセンサーは人類に大きな成果をもたらす? 脳と機械を接続する「スマートダスト」

2016年9月4日(日)14時35分
ケイト・ローレンス ReadWrite[日本版]編集部

「スマートダスト」と聞くとなにやらSFのような感じを受けると思うが、これはSFではなく現実だ。カリフォルニア大学バークレー校の科学者たちは「ニューラルダスト」なるものを開発している。これは体内に仕込むことで内部の神経や筋肉、内臓をリアルタイムでモニターするものである。

 ニューラルダストのサイズは大きめの砂粒くらいのもので、体外から照射される超音波振動を電力に変える〈ピエゾ素子〉を備えたトランジスタであり、神経や筋肉繊維に直接取り付けることができる。繊維の電位の変動により、ピエゾ素子の振動が変わることで、超音波レシーバーへの反響が変わる。後方散乱と呼ばれるこのわずかな振動は、電圧の変化を読み取ることができるのだ。

 この研究は将来、人口装置のコントロールやロボティクスのために、脳と機械を結びつける装置(ブレイン・マシン・インターフェイス)への応用や「電気薬学」と呼ばれる新たなバイオ産業に利用されることになるだろう。

「『ニューラルダストプロジェクト』のもともとの目的は、次世代の脳とマシンのインターフェースについて推測し、これを実用的な医療技術にすることである。たとえば、半身不随者がロボットアームかPCを動かしたいと考えた場合、この電極を一度脳に埋め込めば実現できるようになる」と、神経科学で大学院に在籍するリアン・ニーリー氏は語る。

 現在ある埋め込み可能な電極は、1-2年で劣化してしまい、さらにワイヤレスでないため頭蓋骨に穴を開ける必要がある。この代わりにワイヤレスセンサーを埋め込むことができれば、電極の位置がずれることや感染症を防ぐこともできるようになるだろう。

スマートダストはIoT創造性の究極の形か

 新たに登場する技術についてGartner がおこなっているリサーチによれば、スマートダストは向こう5-10年内にトレンドを迎えると予想されている。研究施設では 1990年代後半から取り組まれている分野であり、彼らの研究は アメリカ国防高等研究計画局(DARPA) からも「革命的な小型化・統合化・エネルギーマネジメント」を伴うことから、軍への応用を目的とした支援を受けている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 9
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中