ISISの海外テロ責任者アドナニの死でテロは収まるか
そのアドナニの死は、ISISの生き残り戦略と新兵募集に深刻なダメージを与えるだろう。
だが、これでテロが収まると思うのは早い。幹部を次々に失い、支配地域と資金源を失いつつあるISISは、残された拠点を死守し、欧米人を恐怖の底に陥れるテロ攻撃を仕掛けようとする、と専門家は断言する。
「指導者が殺されると、テロ組織はいっそう過激になりがちだ。直後には、民間人を標的にした攻撃を行う確率も高い」と、ノースイースタン大学の政治学者で米シンクタンク・外交問題評議会のメンバーでもあるマックス・エイブラムズは言う。
エイブラムズによると、テロ組織で幹部がいなくなると下部のメンバーがいきなり権力を握るため、攻撃のターゲットが変わる傾向がある。ただし、アドナニは尋常でなく過激だったので、それ以上に過激になることは考えにくいという。
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アドナニはシリアのイドリブ県で77年に生まれた。「ISISの声」となり、過激思想に傾倒する若者に欧米諸国でテロを実行するよう、イスラムの聖なる月ラマダンを中心に、ネット上で盛んに呼び掛けてきた。その影響力は極めて大きく、米政府は500万ドルの懸賞金をかけて居場所の特定を急いでいた。
アサドに捕まったことも
03年の米軍のイラク侵攻後、国際テロ組織アルカイダに入り、そこから分派したISISのメンバーとなったアドナニは、ISISの最古参の幹部の1人で、発足当初から中心的なメンバーだった。イラクでは米軍に、シリアではアサド政権に収監されたことがある。
最盛期のISISは頭がいくつもある怪物のような組織だったが、米軍主導の有志連合がそれらの頭をひとつずつ斬り落としてきた。ここ数カ月間に戦争大臣のアブ・ウマル・アル・シシャニ、ナンバー2の司令官だったアブドゥル・ラーマン・ムスタファ・アル・カドゥリが殺害され、アドナニの死で、残された著名な指導者はバグダディのみとなった。
「(アドナニの)死でISISが終わるわけではない」と、安全保障専門のコンサルティング企業ソウファン・グループは30日に発表した。「それでも、ISISにとっては大きな痛手であり、テロの舞台から主役級の役者がまた1人消えたことになる」