2つの難民サミット、世界にまだできること
第3に、難民を受け入れ国とは別の国に定住させる第三国定住を拡充する必要がある。世界の難民の10%に相当する約160万人を今後3年間で第三国に定住させることができれば、過大な負担を背負う受け入れ国にとっても事態は好転する。1年間に約50万人なら、十分に達成可能な数字だ。先進国が毎年受け入れている合法的な移民と比べればほんの一握りだ。アメリカは伝統的に第三国定住のリーダーであり成功者だ。難民を援助から自立させ経済的に自立させるのも速い。米政府は第三国定住の受け入れをもっと増やすべきだ。それが正しいからではない、それがよい投資だからだ。
難民支援を行う米NGOの国際救済委員会(IRC)では昨年、第三国定住させた難民の88%が求職し、採用された。2009~2011年には、16歳以上の難民男性はアメリカ人の16歳男性より働いている確率が高かった。第三国定住は世界で最も貴重な人材に希望への道を拓くだけでなく、既に多くの難民を抱える受け入れ国の負担を軽減することにもなる。
こうした課題を成し遂げるには、各国政府が協調してビジネス革新への指導力を発揮し、また世界の問題を解決しようという人々を動員することも必要だ。9月のサミットは、これだけのスケールの悲劇にも対応できるよりよい人道システムを作るいい機会だ。失敗の痛みは難民たち自身よりはるか遠くまで及ぶだろう。世界秩序の将来が危機にさらされる。