住民に催涙弾、敵前逃亡、レイプ傍観──国連の失態相次ぐ南スーダン
ジュバで起きたような国連の失態は、今に始まったことではない。4万7500人以上が避難生活を送るマラカルの国連基地内で2月に民間人が武装集団に襲撃されたときは、PKO部隊が持ち場を放棄して40人以上が死傷した。この事件を受けて国連本部調査委員会は、「行動せず、持ち場を放棄し、事態への対応を拒んだ結果」としてPKO部隊を激しく非難。PKO部隊が「国連を頼ってきた民間人を命の危険にさらした」と結論づけた。
マラカルの襲撃後、フランスのエルベ・ラドスース国連PKO担当事務次長は南スーダンにおけるPKO任務の失敗を認めたうえで、現場にいた一部の隊員を本国に送還すると発言。二度と同じ事態を繰り返さないために「訓練の強化」を誓ったばかりだった。だが7月に起きた一連の事件へのUNMISSの対応を見る限り、マラカルの教訓は未だ生かされていない。詳細な事実関係については議論の余地があるとはいえ、PKO部隊がまたもや民間人を守る任務を怠ったのは事実だ。
詳細
7月8日にジュバで戦闘が勃発したとき、2万7000人以上の民間人がジェベルの国連基地内にある2箇所の保護区「第1PoC1」と「第3PoC3」に避難していた。サルバ・キール大統領派の軍隊と、同大統領の第1副大統領で反体制派の元指導者であるリヤク・マシャール派の軍隊との戦闘が激しくなると、2つの保護区もも集中砲火を浴びるようになった。戦闘が最も激しかった7月10日と11日の2日間で民間人10数人が死亡、さらに多くが負傷した。PKOに参加する中国人隊員2名も、乗っていた車両が爆破物の攻撃を受けて死亡した。
保護区という名前とは裏腹に、PoCは外で繰り広げられる戦闘から文民を守るようにはできていない。PoCを囲むのは有刺鉄線のフェンスや土のバリケードで、銃弾や砲弾に対しては防御力をほとんど発揮しない。テントは主にビニールシートや固めた泥でできており、8月上旬に筆者がPoCを訪れたとき、人々はテントに無数に開いた銃弾の穴を見せてくれた。
ある女性は、ベッドの下に隠れていた子どもたち4人のうち、娘が腕を撃たれたときの様子をくわしく話してくれた。
医療関係者によると、重症を負った結果、人工肛門用の排泄袋を使用することになった者も3人いたという。
7月10日、第1PoCと国連基地の中核施設とその他を分ける有刺鉄線フェンスの近くで、破裂弾かロケット弾が爆発した。そのすぐ横には、母親と5人の子どもが座っていた。駆けつけた子どもの父親は、目にした光景に打ちのめされたという。「子どもたちは全員、意識を失っていた。誰が死んで、誰が生きているのかわからなかった」