黒人射殺事件の連鎖を生む元凶は
それを強く思い知らせたのが、先週テキサス州ダラスで起きた警官銃撃事件だ。バトンルージュとセントポールの事件に抗議するデモの現場で発生した銃撃事件により、警官5人が射殺された。この悲惨な事件は、警察の仕事がより難しく、より危険になっていることを浮き彫りにしている。
警官たちはしばしば、自らの命を危険にさらす状況に身を置く。そして、89年の連邦最高裁判決が述べているように、「緊迫し、不確実で、急速に変化する状況下で、目の前の局面に対処するためにどの程度の武力を用いる必要があるかを瞬時に判断しなくてはならない」。
状況が不確実であるために、警官には、武力行使の判断が完全に正しいことまでは要求されていない。法律は、警官やその他の人たちに危険が及ぶという判断が合理的なものであれば、相手の命を奪いかねない武器の使用も容認している。
問題は、裁判所が合理性の判断で警官に大きな裁量を認める場合が多いことだ。この問題は、銃の拡散によりますます甚だしくなっている。
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州法により民間人の銃携行へのハードルが低い州では、誰もが銃を持っていると警官が判断することがより合理的になる。その結果、警官の銃使用が合理的と認められる基準がどんどん緩くなっていくのだ。
一つ一つのケースを見れば、フィルの事件のように、警官の判断が合理性を欠くと思えるかもしれない。しかし全体としては、警官が市民と接する際に命の危険を感じても、非合理とは言いにくくなってきている。
相互の不信感を取り除け
バージニア大学法科大学院のレーチェル・ハーモン教授が指摘するように、警官に瞬時の正しい判断を期待することには無理がある。
ハーモンは次のように述べている。「銃携行の規制が緩ければ、警官は銃を所持した市民と遭遇する確率が高くなる。町で接触する誰が銃を持っていても不思議でない。職務質問で停止させた車の運転手が銃を持っている可能性もある。警官が恐怖心を抱き、発砲する過程に、銃の存在が及ぼしている影響をもっとよく考えるべきだ」
銃の拡散がさらに進めば、銃を持った市民と警官が接触したときに、警官が恐怖心に駆られて慌てて行動し、その結果として市民の命が奪われるケースはますます増えるだろう。今回起きたダラスの警官銃撃事件は、警官が抱く恐怖心を一層強めることになりそうだ。