「酒の安売り許さん!」の酒税法改正は支離滅裂
ディスカウントストアが酒の安売りをやめれば、街の酒屋に客が戻ってくると本気で信じているのだろうか。あまりにもナイーヴすぎる牧歌的な発想に思える。コンビニで定価の酒が売れている事実を、直視できないのだろうか。
このたびの酒税法改正は、なぜか支離滅裂なのである。居酒屋で酔っぱらいながら法案を書いたわけでもあるまい。安売り規制の効果については、肝心の一般酒販店の側からも疑問の声が上がっているという。そのまっとうな感覚に、ホッと安心させられる。
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「巨大資本による、酒の安売り憎し!」とばかりに、酒販組合から政界へ懸命にアプローチを続けてきた。その間に、社会を取り巻く状況は大きく変化していた。そういうことではないだろうか。日本人の収入が全般的に減っているのだから、物の値段も下がらなければ釣り合うはずがない。
他の業界と同じように、きっと酒販業界にも「酒を売る」だけでなく、「酒の付加価値を売る」べき時代が到来しているのだろう。これからは、酒の楽しみ方や、交流の場の提供、あるいはアルコール依存症や飲酒運転の予防や改善など、酒をたしなむ「人」にフォーカスした取り組みを実行していかなければならないと、すでに現場の一部は気づき始めている。
[筆者]
長嶺超輝(ながみね・まさき)
ライター。法律や裁判などについてわかりやすく書くことを得意とする。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。2007年に刊行し、30万部超のベストセラーとなった『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)の他、著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)――こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。ブログ「Theみねラル!」