南シナ海裁定、中国国内で対立? 軍部が習主席に「強硬対応」促す
軍部は態度を硬化
指導部に近い別のある関係筋は、人民解放軍には「タカ派」の雰囲気が漂っていると言う。「米国はやるべきことをやるだろうし、われわれもやるべきことをやる。軍部が全体として態度を硬化させている。ひどく体面をつぶされたからだ」と語り、それ以上のコメントは拒んだ。
中国国防部の楊宇軍報道官は、人民解放軍はより強硬な対応を求めているのかという質問に対し、軍はいかなる脅威や挑戦にも対応しつつ、中国の領土及び海洋における権利、平和と安定を断固として守るだろう、との答えを繰り返した。
退役した人民解放軍将官と、軍とつながりの深い学識者は、非常に好戦的なメッセージを掲げている。
軍が運営する国防大学の梁芳教授は、ハーグ裁定について、中国版ツイッターの「微博」に「中国軍は戦力を高め、力強く戦う。中国は、主権問題に関して、いかなる国にも屈しないだろう」と投稿した。
軍の強硬派がどのような手段を考えているのかは明らかではない。
大きな関心が注がれているのは、中国が南シナ海に防空識別圏を設定する可能性だ。防空識別圏が設定されれば、各国の航空機に対し、中国当局への識別情報の提供が求められるようになる。
他の選択肢として軍に近い関係筋が示しているものには、南シナ海を哨戒飛行する爆撃機に、フィリピンやベトナム内のターゲットを攻撃可能なミサイルを搭載するという案もある。
退役した中国軍大佐のYue Gang氏は、中国が域内での定期的な哨戒飛行を公約したことは、米国が航空母艦によって実現している制空権を拒否しようとする意思を示していると指摘。中国は、事件を誘発して米国を締め出すだけの自信をつけているはずだ、と同氏は言う。
「中国は米航空母艦に怯んでいないし、不慮の衝突を引き起こすだけの勇気も備えている」とYue氏は「微博」に投稿した。
行動を伴うかどうかはさておき、この地域における中国の軍備増強は加速しつつあるようだ。
中国・厦門大学にある南シナ海研究所の李金明氏は、学術誌「東南アジア研究」において、「長期的な戦いに向けて準備し、今回の裁定を南シナ海における軍事戦略の転機としなければならない」と書いている。