戦没者遺族に「手を出した」トランプは、アメリカ政治の崩壊を招く
その代わり、富豪や実力者に対する攻撃はためらわない。たとえばセオドア・ルーズベルトは、スタンダード・オイルの取締役会を「アメリカ最大の犯罪集団」と呼んだし、バラク・オバマはコーク兄弟や大統領選出馬前の富豪としてのドナルド・トランプを非難してきた。
ジャーナリストも批判する。1994年にはビル・クリントンが、保守派キャスターのラッシュ・リンボーについて、「1日3時間、言いたい放題」で、大統領の自分よりも大きな拡声器を手にしていると批判した。
また、1950年にハリー・トルーマンがワシントン・ポスト紙の評論家ポール・ヒュームを非難する手紙を書いたのは有名だ。トルーマンの娘のピアノ演奏を酷評したヒュームに宛てた手紙の中で、トルーマンは次のように書いている。「いつかあなたとお会いしたい。そのときには、あなたは新しい鼻が必要になるだろう。おそらく股間サポーターもだ!」
一般市民の言うことには耳を傾ける一方で、富豪や権力者やジャーナリストとは正面切って論争する。それがアメリカ大統領、あるいは大統領候補に常に期待されてきた姿だ。
だが、トランプが一般市民、それも戦没者遺族にイスラム教という無関係のアングルから反論しようと決め、侮辱したことで、この出来事は途方もなく大きな問題になってしまった。ドナルド・トランプがもし大統領になったら、これまでの大統領像も変わるだろう。