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黒田緩和「検証」で枠組み転換の思惑、マイナス金利見直しも

2016年7月30日(土)09時18分

7月29日、今回の金融政策決定会合で、黒田東彦日銀総裁(写真)はマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)の「総括的な検証」を執行部に指示した。(2016年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 今回の金融政策決定会合で、黒田東彦日銀総裁はマイナス金利付き量的・質的金融緩和(QQE)の「総括的な検証」を執行部に指示した。これが急速に市場の注目点として浮上中だ。

 専門家からは、現在のマネタリーベース目標から金利ターゲットへの変更、信用緩和への踏み込みなどが検証後にあるのではないかと指摘されている。金融機関収益への影響など副作用が着目されやすいマイナス金利政策の取り扱いも焦点になる。

前提は2%目標の早期達成、金融政策の限界示す

 総裁が指示した「総括的な検証」は、あくまで現行の2%の物価安定目標を「できるだけ早期に達成する」ことが前提。総裁も会見で「できるだけ早期に2%を達成するという点は、変更するつもりはない」と繰り返した。

 このため、検証作業では物価2%目標のあり方には踏み込まず、マイナス金利付きQQEが狙いとする実質金利の低下やインフレ期待の押し上げ、物価の基調に与えた影響などを中心に、それぞれが実体経済や金融市場に与えた効果と副作用について分析が進む見通しだ。

 もっとも、市場が注目するのは検証の結果よりも、それを受けて政策の枠組みがどのように変化するかだ。

 総裁は会見で3つの次元のこれまでの政策効果を強調するとともに、政策の限界を否定したが、市場では「検証するということは、イコール新たな枠組みに移行することだろう」(クレディ・スイス証券・チーフエコノミストの白川浩道氏)との見方が支配的だ。

 総裁も会見で「2%の物価目標をできるだけ早期に実現する観点から検証し、それに応じて必要ならば必要な措置をとる」と明言。枠組み変更の可能性を否定しなかった。

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