オールスター勢ぞろいの民主党大会、それでも亀裂は埋まらない
オバマ大統領の演説は、40分に渡る力強いものだった。「2008年の予備選は厳しい戦いだった」とヒラリーと争った時代を懐かしみ、そして国務長官時代の彼女の功績を讃えた。決め台詞である「Yes, we can!」まで持ち出し、場内を大いに盛り上げた。演説が終わるとヒラリーが登壇し、2人は一緒に大喝采を浴びた。
いよいよ最終日の4日目、娘のチェルシーの紹介でヒラリーが登場し、約1時間にわたって「指名受諾演説」を行った。自身の生い立ちをたどりながら、同時にアメリカの建国の理念に立ち返って「妥協による団結」を訴える力強いスピーチだった。演説後に舞う紙吹雪と風船は、前週の共和党大会と同じだったが、参加者の熱気は明らかに高かった。
表面的は大いに盛り上がった民主党大会だが、その一方で開催中ずっと不協和音が続いていたのも事実だ。サンダース支持者を中心とした党内左派は、何かにつけてブーイングしたり、「Bernie or Bust」(「バーニーでなければ、全部ぶち壊す」という意味)と叫んだりしていた。
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こうした民主党左派と中道の間には、まず格差という亀裂があり、そして軍事外交をめぐる亀裂もある。例えば、3日目に登壇したレオン・パネッタ国防長官は、ヒラリーの政策ブレーンの1人だが、サンダース支持者からは「No more war!(戦争はゴメンだ)」という野次が絶えなかった。本来リベラルであるパネッタは、粘り強く野次のやむのを待っていたが、さすがに困惑を隠せない表情だった。
党内の亀裂が修復できなければ、結局はトランプを利することになるのは、サンダース支持者もよくわかっている。だが、それでも「ヒラリーが嫌い」だと言って、若者の一部には「サンダースでないのなら、トランプに入れる」という声が残っている。彼らは「オールスター」による党大会の盛り上がりに対しても、「エスタブリッシュメント(支配階層)」の権力誇示を見る思いがするらしく冷ややかなのだ。
その根底には、社会価値観の「フロンティア消滅」という問題がある。以前の民主党は、中道と左派が経済や外交の政策では割れていても「同性婚」や「女性の選択の自由(中絶問題)」などで強硬姿勢を取る共和党に対して団結することができた。だがこの2つの問題は、時代の変化と最高裁の確定判決によって国民的な合意ができ、ある意味で「過去の問題」になったのだ。
つまり民主党は、価値観の根幹の部分で連携して共和党の保守思想に対抗する「必要性が少なく」なっている。残るは銃規制だが、この点になると、例えばサンダースが「隠れ銃容認」であるように、地域特性が出てきてしまって党内の団結は難しい。そう考えると、中道現実派と左派との間の距離感は民主党内で当面続くと見て良いだろう。問題は、この亀裂が11月の投票行動にどう影響するかで、そこは9月以降の2人の候補のテレビ討論など、今後の選挙戦で大きな注目点になる。