最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

オールスター勢ぞろいの民主党大会、それでも亀裂は埋まらない

2016年7月29日(金)16時00分
冷泉彰彦(在米ジャーナリスト)

Jim Young-REUTERS

<オバマとミシェル夫人、夫ビルなど民主党のオールスターが結集してヒラリーを支援した党大会。しかし「反エスタブリッシュメント」を掲げる党内左派と中道派の間にできた亀裂は、簡単には埋まりそうにない>

 先週の共和党大会に続いて、今週は民主党大会がフィラデルフィアで開催された。その日程は共和党大会と同じで、月曜から木曜までの4日間。2日目に各州の投票(ロール・コール)を行って候補を正式指名し、最終日には候補自身が「受諾演説」を行うといった手順も同じだ。

 ちなみに、初日からドナルド・トランプ候補自身が登場した共和党大会と違って、民主党大会ではヒラリー・クリントン候補は初日と2日目には姿を見せず、3日目になって「チラッ」と登場したのだが、これはむしろヒラリーの方が「伝統」に即している。初日から出てきては「ありがたみ」がないわけで、過去にも同じような演出は両党で採用されてきた。

 しかし問題は中身だ。ブッシュ父子をはじめ、ロムニー前大統領候補、マケイン元大統領候補など党の重鎮が欠席した一方で、トランプの妻と4人の子供がスピーチに立つなど、トランプの内輪の人間ばかりが目立った共和党大会に比べると、民主党大会はそれこそ党の要人が勢揃いして、その「オールスター・ラインナップ」を誇示するかのようだった。

【参考記事】大荒れの民主党大会で会場を鎮めたミシェルのスピーチ

 まず初日には、大統領夫人のミシェル・オバマが登壇した。8年間ファースト・レディーとして国民的な人気を集めてきたミシェル夫人は、猛烈なカリスマ性をもって聴衆を魅了した。

 例えば、「奴隷たちが建てたこのホワイトハウスに寝起きする私は、その前庭で私の娘たちが遊ぶのを見てきました。そしてその娘たちは、今度は女性が大統領になる時代に生きるのです」。ほんの短いこれだけの文章に、奴隷解放と人種融和、そして女性の権利の拡大へと歩んできたアメリカの歴史を凝縮させて見せ、そして民主党の団結を説いたのだ。

 またバーニー・サンダース候補は、自分の支持者が「敗北を認めず、ヒラリーを支持しない」という不穏な空気を引きずる中で初日に登場し、「自分たちの政策をヒラリー陣営にのませた」ことで「政治的革命は成功しつつある」と述べて、懸命に支持者たちに団結を訴えた。サンダースに近いと言われるエリザベス・ウォーレン上院議員もこの日に登壇し、ヒラリー支持を訴えた。

 2日目にはヒラリーの夫ビル・クリントンが登場。もともと天才的にスピーチの上手なこの大衆政治家が、その健在ぶりを見せつけるようなパフォーマンスだった。「1971年の春。私は1人の女性に出逢いました」から始まるヒラリーとの青春の思い出、そしてプロポーズを2度断られた話から、結婚後の苦労話や子育てといったヒラリーと自分とのパーソナルなエピソードをふんだんに盛り込みながら、最後は政治的なメッセージを強く訴えた。

 さらに3日目の顔ぶれは、超豪華としか言いようのないもので、バイデン副大統領、ブルームバーグ元NY市長、ティム・ケーン副大統領候補と、これだけでも「お腹一杯」のメンバーに加え、最後にバラク・オバマ大統領が登場して場内の興奮は最高潮となった。この中では、ブルームバーグが「非民主党員・無所属」という異色の立番で登場し、厳しいトランプ批判を繰り広げる一方、サンダース支持者に対しては「民間セクターを毛嫌いしても何も生まれない」と「注意」する一幕もあった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ウクライナ、鉱物資源協定まだ署名せず トランプ氏「

ビジネス

中国人民銀総裁、米の「関税の乱用」を批判 世界金融

ワールド

米医薬品関税で年間510億ドルのコスト増、業界団体

ワールド

英米財務相が会談、「両国の国益にかなう」貿易協定の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    トランプ政権の悪評が直撃、各国がアメリカへの渡航勧告を強化
  • 3
    健康寿命は延ばせる...認知症「14のリスク要因」とは?【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    アメリカ鉄鋼産業の復活へ...鍵はトランプ関税ではな…
  • 6
    関税ショックのベトナムすらアメリカ寄りに...南シナ…
  • 7
    ビザ取消1300人超──アメリカで留学生の「粛清」進む
  • 8
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    ロケット弾直撃で次々に爆発、ロシア軍ヘリ4機が「破…
  • 1
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 6
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 7
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 8
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 9
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 10
    トランプ政権はナチスと類似?――「独裁者はまず大学…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中