逃げ切るのか、中国――カギはフィリピン、そしてアメリカ?
判決が出た後も、中国はひたすら、この宣言で十分だと主張し、フィリピンの仲裁裁判所への提訴そのものが、「南シナ海行動宣言」の精神に違反しており、信頼関係を裏切ったと激しく非難してきた。
したがって、結局は「判決は紙くず」で、中国へ全面勝利を収めたというのが中国政府の宣言だ。CCTVを中心として、中国メディアは勝利に沸き、気炎を上げている。
ライス大統領補佐官と習近平国家主席の会談
そこに重ねるように、7月25日、アメリカのライス大統領補佐官(国家安全担当)が北京を訪問し、人民大会堂で習近平国家主席と会談したことを、26日の中央テレビCCTVは、繰り返し伝えた。CCTVそのものよりも、比較的ブレが少ない「新浪軍事」のサイトでご覧いただきたい。
ライスさんが、「まるで尊敬を込めて見上げる姿勢」と、「まるで愛おしさを込めて」、その視線に応える習近平氏の「まなざし」がクローズアップされた。
「まるで」を続けて申し訳ないが、それは「まるで」、アメリカが中国にひざまずいている姿を印象付けようとしているように筆者には見えた。印象付ける対象は中国人民であり、国際社会へのシグナルでもあろう。
習近平氏は「私は過去3年間、オバマ大統領とは何度も会っており、中米新型大国関係で認識を共有している」と述べ、ライス補佐官は、にこやかに「はい、オバマ大統領も今年9月のG20で習近平国家主席ともう一度お会いできることを大変たのしみにしています」と答える。二人は中米の安定的関係がいかに国際社会に対して重要であるかを讃えあった。
この姿を、「南シナ海勝利宣言」とともに報道するのだ。
中宣部の「まやかし」の力は、どこまでいくつもりだろう。
ラモス元大統領が特使として中国訪問予定
まだASEAN外相会談が開幕したばかりの24日夜、CCTVがフィリピンのラモス元大統領(1992年~98年)(88歳)が南シナ海問題の特使として訪中することになったと報道した。
それは筆者が「中国空海軍とも強化――習政権ジレンマの裏返し」で「フィリピンの新大統領が親中路線を翻(ひるがえ)す」を書いた後の出来事だった。
ということは、フィリピンのドゥテルテ大統領は、ASEAN外相会談では「仲裁案を共同声明に盛り込め」と強く主張しながら(其のポーズを取りながら)、一方では「前言を翻さない方向」(つまり親中路線)で動いていたことになる。