最新記事

テクノロジー

スノーデンが、敵対政府から記者を守るデバイスを開発

2016年7月25日(月)17時15分
アバニシュ・パンディ

Mathias Loevgreen Bojesen/Scanpix Denmark/REUTERS

<スマホにアクセスして記者の位置情報を知り、狙い澄まして砲撃する──実際にあったそんな悲劇をこれ以上増やさないためのデバイスのプロトタイプがこれだ>

 元スパイのエドワード・スノーデンは先週、著名なハッカー、アンドリュー・バーニー・ホアンと協力して、スマートフォンに装着して政府の監視からジャーナリストを守るハードウエアを開発中だと発表した。

「内部監視エンジンintrospection engine」と呼ばれるこのデバイスは、スライドしてiPhone6にかぶせるプラスチック製のケースで、、電話の中のアンテナを監視、不正な無線信号を探知したらユーザーに警告する。

snowden01.jpg
Andrew Huang & Edward Snowden

「このデバイスを使えば、記者に危険を知らせることができる」と、先週発表されたスノーデンとホアンの共同リリースは言う。「オープンソースなので、ユーザーも自分で調べることができる」

 デバイスには小さい白黒のスクリーンが付いており、不審な無線通信があると点滅する。スマホのフライトモードより、不審な電波を遮断する上ではるかに効果的だという。「フライトモードで既にハッキングされた電話を信用するのは、酔っ払いに自分は運転しても大丈夫かどうかを判断させるようなものだ」と、2人は言う。

 電源を切ったつもりでも安心はできない。ハッカーは、電源を切ったように見せかけて悪さをすることもできるからだ。

スマホを的に撃たれた

 敵対する政府にスマホを襲われた恐ろしい例としてスノーデンとホアンを警戒させるのは、2012年にシリアで英サンデー・タイムズ紙の戦争特派員、マリー・コルビンが砲撃を受けて死んだ事件。シリア政府が彼女のスマホから位置を割り出し、狙い澄まして撃った殺人だったと言われている。

「2016年にシリア政府に対して起こされた訴訟では、コルビンは意図的に狙われ、シリア政府の砲撃で死んだとなっている。彼女の居場所は、衛星アンテナと携帯通信をモニターする傍受装置を使って特定したことになっている」と、スノーデンらは言う。「危険が現実のものであることを痛感させられる」

 2人の発表は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディア研究所で開催された会議で行われた。スノーデンはロシアから中継で参加した。スノーデンは米国家安全保障局(NSA)の契約社員だった2013年夏、NSAが世界的に不正な情報を集めているという極秘の証拠書類を盗んで国外逃亡して以来、ずっとロシアに住んでいる。

「必要なのは、大きなケースで1~3件、現場を押さえることだ」と、スノーデンは米ワイアード誌に語った。「そうすれば、情報機関も盗聴や不正な情報収集を止めるだろう」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中