ようやくヒラリーを受け入れ始めたサンダース支持者
彼はこのイベントについて、「サンダースがヒラリーを公式に支持した後、ヒラリーがサンダースを副大統領候補として発表する」というシナリオを望んでいるというが、「たぶんないだろうね」と諦めた様子で語った。「それでも、ヒラリーや民主党にプログレッシブなアジェンダを多く取り入れさせたことで、すでにサンダースは多くの勝利を得ている。このイベントを楽しみにしている」と、終始笑顔だった。
ポールのように政治イベントそのものを楽しみにしているサンダース支持の若者が多いのは意外だったが、もちろんそういった人たちばかりではない。
フェイスブックやツイッターで活発にサンダースを応援してきたという30代くらいの女性ミシェルは、「バーニーにはヒラリーを支援してほしくないし、彼が支援してもヒラリーには投票しない」と、はっきり断言していた。「バーニーが今日何を語るのかはわからない。彼が民主党の指名候補にならないのなら、無所属(あるいは第三政党)で候補として大統領選に出馬してほしい。まだ(彼が大統領になるという)希望は捨てていない」と強い口調で語った。
民主党にとって、このイベントの最大の目標は、サンダースが公式にヒラリーを支持することで、分裂していた民主党を団結することだった。今回も、イベントが始まる時間まで、サンダースの支持者が「バーニー! バーニー!」と大声でチャントすると、ヒラリー支持者が「ヒラリー! ヒラリー!」とそれを打ち消そうとするスポーツ大会のような光景が繰り広げられた。
これはいつものことだが、今回はそれらの声に「ユニティ!(団結) ユニティ!」というチャントが覆いかぶさり、多くのヒラリー支持者がそちらに切り換え、最後には「ユニティ」の声が会場を圧倒したのが印象的だった。
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イベントではまず、環境問題を取り上げたノンフィクション『自然の終焉』の著者であるビル・マッキベンが壇上に立った。彼はサンダースの支持者で、アドバイザーでもある。マッキベンが、予備選でサンダースが達成したことを語り始めたとき、会場の一部に集まっていた熱心なサンダース支持者らの間に緊張が走った。この後にサンダースが敗北を認め、ヒラリー支持を明らかにする下準備であることが明らかになってきたからだ。
その後、サンダース自身がスピーチに立ち、「今日ここに来たのは、なぜ私がヒラリー・クリントンを支持するのか、なぜ彼女が次期大統領になるべきなのか、それをできる限り明瞭にするためだ。(中略)クリントン国務長官は、民主党の指名を獲得したのであり、私はその健闘を祝う」と発表したときには、抱き合って涙ぐむ支持者の姿も見えた。サンダースのスピーチが終わるやいなや、前述のミシェルや周囲の情熱的なサンダース支持者たちは、ヒラリーの演説を待たずに会場を去った。
野次やネガティブな反応は、もちろん誰もが予想していた。意外だったのは、それが予想したほどではなかったことだ。同じくニューハンプシャーで2月に開催された民主党のイベントとは比べものにならないほど温和な雰囲気だ。出席していたサンダース支持者たちの率直な言葉から浮かんでくるのは、ふだんメディアにはあらわれない大多数の支持者の心理だ。
先の高校生ポールと母親のリサは、サンダースのことを親しい家族のように語るほど愛着を抱いているが、一部のサンダース支持者のように「サンダースが第三政党候補として出馬する」ことや「アメリカ緑の党のジル・スタインに投票する」ことには賛同できないと言う。「危険なトランプが大統領になる道を作る」からだ。ポールもリサも、積極的ではないけれど、トランプを阻止するためにヒラリーに投票すると言う。