最新記事

アジアのフィンテック拠点争い、シンガポールがライバル香港をリード

2016年7月9日(土)19時43分

7月4日、シンガポールが金融テクノロジー「フィンテック」のアジア拠点を目指して国家による資金拠出や規制緩和などの対策を進め、競争相手の香港をリードしている。写真はシンガポールのビジネス中心街。6月撮影(2016年 ロイター/Edgar Su)

 シンガポールが金融テクノロジー「フィンテック」のアジア拠点を目指して国家による資金拠出や規制緩和などの対策を進め、競争相手の香港をリードしている。

 シンガポールは従来からオフショアのプライベートバンキング(富裕層向け金融サービス)拠点だが、隣国マレーシアの大規模なマネーロンダリング(資金洗浄)事件などを受け、その地位が脅かされている。

 伝統的な主要産業である海運や製造業も、世界的な景気減速や資源安で足腰が弱っている。

ブレグジットが追い風

 そうした中、ロンドンに拠点を置くフィンテック企業約6万社がシンガポールに関心を寄せており、英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を決めた今、こうした傾向は加速しそうだ。

 フィンテック関連のコンサルタント会社、trybの共同創設者であるMarkus Gnirck氏は「英国で競争が激しくなり過ぎたためアジアに拠点を移したいという声が、英国にある企業から既に寄せられている。ブレグジットでこうした会話がさらに増えそうだ」と語る。

 trybによると、シンガポールにあるフィンテック企業約210社のほとんどが過去2年以内に起業したもので、成長速度はアジアで最も速い。

障害

 しかし新興企業やコンサルタントによると、シンガポールには外国人労働者の流入を制限して自国民を優先する移民法があり、これが人材不足を招いてフィンテック産業の障害になっている。

 またシンガポールの銀行規制はリスク回避志向の文化を生み出しており、試行錯誤が身上の新興フィンテック企業とは相入れない。

 もっとも、シンガポール政府の努力は実を結びつつある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中