アジアのフィンテック拠点争い、シンガポールがライバル香港をリード
7月4日、シンガポールが金融テクノロジー「フィンテック」のアジア拠点を目指して国家による資金拠出や規制緩和などの対策を進め、競争相手の香港をリードしている。写真はシンガポールのビジネス中心街。6月撮影(2016年 ロイター/Edgar Su)
シンガポールが金融テクノロジー「フィンテック」のアジア拠点を目指して国家による資金拠出や規制緩和などの対策を進め、競争相手の香港をリードしている。
シンガポールは従来からオフショアのプライベートバンキング(富裕層向け金融サービス)拠点だが、隣国マレーシアの大規模なマネーロンダリング(資金洗浄)事件などを受け、その地位が脅かされている。
伝統的な主要産業である海運や製造業も、世界的な景気減速や資源安で足腰が弱っている。
ブレグジットが追い風
そうした中、ロンドンに拠点を置くフィンテック企業約6万社がシンガポールに関心を寄せており、英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を決めた今、こうした傾向は加速しそうだ。
フィンテック関連のコンサルタント会社、trybの共同創設者であるMarkus Gnirck氏は「英国で競争が激しくなり過ぎたためアジアに拠点を移したいという声が、英国にある企業から既に寄せられている。ブレグジットでこうした会話がさらに増えそうだ」と語る。
trybによると、シンガポールにあるフィンテック企業約210社のほとんどが過去2年以内に起業したもので、成長速度はアジアで最も速い。
障害
しかし新興企業やコンサルタントによると、シンガポールには外国人労働者の流入を制限して自国民を優先する移民法があり、これが人材不足を招いてフィンテック産業の障害になっている。
またシンガポールの銀行規制はリスク回避志向の文化を生み出しており、試行錯誤が身上の新興フィンテック企業とは相入れない。
もっとも、シンガポール政府の努力は実を結びつつある。