最新記事

アメリカ政治

米大統領選、副大統領選びのから騒ぎ

2016年7月7日(木)16時47分
安井明彦(みずほ総合研究所欧米調査部長)

 それぞれの大統領候補には、副大統領候補に求めるべき資質が取りざたされている。クリントンの場合には、予備選挙でサンダースを支持した人々を取り込むために、サンダースのようにリベラル色の強い候補を選ぶべきだという意見がある。有力となるのはウォーレンであり、そうなれば正副大統領候補が女性という話題性もある。

 もっとも、サンダースの支持者は既にクリントン支持に転じ始めている。サンダース支持者のうち、大統領選挙ではクリトンではなくトランプに投票しようと考えている割合は、急速に低下している。2008年の大統領選挙で、オバマ大統領と民主党の大統領候補を争ったクリントンの支持者が、いつまでも共和党のマケインに投票する意向を示していたのとは対照的だ。

yasui-2.jpg

 金融規制の強化が持論のウォーレンに対しては、クリントン陣営の資金源であるウォール街の警戒感が強い。ウォーレンを選ぶリスクを冒す必要があるのかどうかは、議論が分かれるところである。

 トランプについては、経験が豊富な政治家を選び、トランプに対する懸念を軽減する必要があると指摘されている。しかし、周囲の助言を聞き入れないトランプの性格は、ここまでの選挙戦で明らかだ。経験豊富な政治家が選ばれたとしても、「トランプと上手くやれるのか」という点に興味は集中するだろう。言い換えれば、焦点があたるのは、副大統領候補ではなく、あくまでもトランプである。

報われない仕事

 副大統領は、大統領に万が一のことがあった場合に、その職位を継ぐ大事な役職である。今回の大統領選挙の場合、いずれの政党の候補も高齢であり、その意味では、副大統領が誰になるかは重要な意味をもつ。しかし、こと選挙の行方という観点では、過熱する副大統領選びは、党大会までの「から騒ぎ」と言えるのかもしれない。

 選ばれる政治家にとっても、副大統領は必ずしも魅力的なポジションとは限らない。1960年代以降に副大統領候補となった政治家のうち、半数以上がいずれかの時点で大統領候補になっているという。しかし、大統領暗殺によって昇格したジョンソンを除けば、実際に副大統領から大統領となったのは、ロナルド・レーガン大統領の副大統領だったジョージ・H・W・ブッシュしかいない。

 冒頭のバイデンの問いかけに、ギングリッチはこう答えている。

「やった方が良いだろうか?それは、いい仕事か?」

yasui-profile.jpg安井明彦
1991年富士総合研究所(現みずほ総合研究所)入社、在米日本大使館専門調査員、みずほ総合研究所ニューヨーク事務所長、同政策調査部長等を経て、2014年より現職。政策・政治を中心に、一貫して米国を担当。著書に『アメリカ選択肢なき選択』などがある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米コロンビア大、全校規模の卒業式中止 ガザ反戦デモ

ビジネス

フランス自動車業界、2027年までにEV販売4倍増

ワールド

メーデー連休中の中国新築住宅販売、前年比47%減少

ビジネス

米新興EVのルーシッド、今年の設備投資の増大見込む
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 2

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 6

    メーガン妃を熱心に売り込むヘンリー王子の「マネー…

  • 7

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 10

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中