最新記事

在日米軍

日米政府が地位協定の「軍属」範囲縮小で合意、沖縄の女性殺害事件受けて

2016年7月5日(火)18時37分

7月5日、日米両政府は、在日米軍で働く民間の米国人のうち、日米地位協定の特権を受けられる「軍属」の対象範囲を狭めることで合意した。写真は元米海兵隊員による女性殺害後、米軍基地への抗議デモ。那覇で6月撮影(2016年 ロイター/Tim Kelly)

 日米両政府は5日、在日米軍で働く民間の米国人のうち、日米地位協定の特権を受けられる「軍属」の対象範囲を狭めることで合意した。沖縄県で女性を殺害し、範囲を見直す発端となったシンザト・ケネフ・フランクリン被告のような民間人は軍属から外れる。

 日本側との会談に臨んだケネディ駐日米大使は、「オバマ大統領は犯罪の再発防止に向け、日本政府と積極的に連携することを明確にした。きょうの合意は、米政府のコミットメントをさらに示すものだ」と述べた。

 両政府は軍属の対象者として、1)米政府の予算や資金で雇用される者、2)米軍艦艇や航空機に乗る被雇用者、3)米軍に関連した公式の目的で滞在する者、4)米軍の運用に必要な高度な技術や知識を持つアドバイザーやコンサルタント━━の大枠を示した。

 今後、日米間でさらに具体化を進める。日本に約7000人いる軍属は、対象者が絞られることになる。公務中に罪を犯した場合に、米側が優先的に裁判権を持つなどの特権がなくなることで、犯罪の抑止効果を高めたい考え。

 岸田文雄外相は会談後、記者団に対し、「シンザト被告のような状況に置かれた者は、軍属には当たらない。日米で一致した認識だ」と語った。

 日本国内、とりわけ沖縄県からの要望が強い地位協定そのものの改定には至らず、運用の改善にとどまった。岸田外相は「法的拘束力のある政府間文書の作成を目指している」と説明。1952年の旧協定締結以来、在日米軍による犯罪や事故が起きるたびに運用改善で対応してきた従来より前進したことをアピールした。

 (久保信博)

[ロイター]


120x28 Reuters.gif

Copyright (C) 2016トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 8
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 9
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 10
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中