最新記事

映画

『アリス』続編、ギャグは滑るが魅力は健在

2016年7月5日(火)16時15分
エイミー・ウエスト


家族愛と友情への賛歌

 脚本のリンダ・ウルバートンが、タイムにあまり時間を割かなかったのは不幸中の幸いだ。おかげで前作の人気キャラクターたちがたっぷり活躍できる。

 ヘレナ・ボナム・カーター演じる赤の女王は舌足らずなしゃべり方、膨れっ面、子供じみたかんしゃくと、何もかも完璧。前作からさらに磨きがかかった存在感を見せる。

 悪役が光るには主役にもそれを受けて立つ力量が要るが、その点、ワシコウスカは十分に存在感がある。友達思いでプラス思考のアリスは赤の女王とは正反対だが、感情の激しさではいい勝負。前作から一段と成長を遂げたようだ。デップと白の女王役のアン・ハサウェイはあまり見せ場を与えられていないが、ちらっとでも魅力を見せてくれるのはうれしい。

【参考記事】残虐映像に慣れきってしまった我々の課題 ―映画『シリア・モナムール』映像の受け取り方

 キャロルの原作『鏡の国のアリス』を読んだ人はお気付きだろうが、この小説は複雑過ぎて映画化には不向き。脚本のウルバートンは『不思議の国のアリス』の要素を盛り込んで独自の物語を練り上げた。

 どんな困難に直面しても決して諦めず友達と家族を守り抜く――作品を貫くメッセージは言葉にすれば月並みだが一癖も二癖もあるキャラクターたち、それに主演級キャストの達者な演技のおかげで心にずしんと響く。

 結婚して子供を産むのが女性の務めとされた時代に社会通念に果敢に挑んだアリス。難点は多々ある続編だが、ボビン監督がアリスのようにやりたいことをやった点は評価していい。


≪映画情報≫
ALICE THROUGH THE LOOKING GLASS
『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』

監督╱ジェームズ・ボビン
主演╱ミア・ワシコウスカ
   ジョニー・デップ
日本公開は7月1日(公開中)

[2016年7月 5日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、日本人の短期ビザ免除を再開 林官房長官「交流

ビジネス

独GDP改定値、第3四半期は前期比+0.1% 速報

ビジネス

独総合PMI、11月は2月以来の低水準 サービスが

ビジネス

仏総合PMI、11月は44.8に低下 新規受注が大
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 6
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 9
    プーチンはもう2週間行方不明!? クレムリン公式「動…
  • 10
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中