トランプ陣営はスタッフも資金も足りない
問題の根本は資金不足
広告はどうなのか。今の選挙戦にテレビCMは欠かせない。政治学者のジョン・サイズとリン・バベリックは12年の米大統領選を分析した共著の中で、有権者1人当たりに対立候補よりもテレビCMを1本多く見せられる候補は、支持率でライバルを1ポイント近く上回ることができるとしている。
クリントン陣営は既に8つの激戦州で、2300万ドル以上をテレビCMに投じている。だが、トランプ陣営はゼロだ。クリントンは自身のイメージ回復とトランプ攻撃のために大金を注ぎ込んでいるのに、肝心の敵は反撃しようともしない。
こうした状況を招いている大本は、トランプの資金不足だ。手元にある資金は、5月末で約130万ドル。クリントン陣営は広告だけで、この20倍近い金額を使っている。トランプはその気になれば資金を調達できるだろうが、積極的に寄付を募ろうとしていないとされる。
選挙運動の体制が充実しているかどうかは、それほど重要ではないとも言われる。大統領選でものをいうのは、選挙が行われる年の失業率や経済成長、外国との紛争といった重要な論点のほうだということだ。有権者は派手なスローガンよりも、候補者が論点にどう向き合うかを重視する。
【参考記事】トランプ、共和党議員の謀反の動きを一喝
だが選挙戦で一方が大々的に動き、もう一方がやる気がないとどうなるのか。大統領候補の討論会が始まる9月に、トランプ陣営にはスタッフも資金も不足しているとしたら?
世論調査からは、トランプと共和党の惨敗という気配も感じられる。今回の大統領選には、ふさわしい結果なのだろう。話術といかさまで成功を手にしたトランプが、傲慢さと自己陶酔によって失敗する......。11月の本選では歴史的大敗もあり得る。
© 2016, Slate
[2016年7月 5日号掲載]