最新記事

アフリカ

邦人も避難へ、緊迫の南スーダン情勢と国連PKO

2016年7月11日(月)19時35分
ジェイソン・パティンキン、タイ・マコーミック

 目撃者の証言によると、ジュバの市民は10日、混乱の最中に荷物をまとめ、比較的安全とされる国連施設を目指して避難した。援助職員の話では、およそ2000人がジェベルの国連施設に面した地域にあって空港に近い国連のトンピン施設へ、他の2000人が国連世界食糧計画(WFP)の施設へと避難した。

「皆、荷物をまとめて逃げ出している」と、別の職員も電話取材で証言した。

 そもそもの発端は7日夜、マシャール派の反政府軍と、ジュバの検問所に配置された政府側の兵士が衝突したこと。それが戦闘に発展し一気に拡大したのは8日。推定250人以上が死亡したと伝わり、午後に両陣営の指導者が事態の収束を求めて会談をしていた最中のことだった。9日までに戦闘は下火になり、ジュバは緊張状態ではあったものの沈静化していた。

 それにもかかわらず、政府軍の兵士は国連のPKO隊員による市内パトロールを妨害し、UNMISSのエレン・マルグローテ・ロイ事務総長特別代表が一時避難していたアメリカ大使館から国連施設へ戻るために派遣した警備隊の通行にも応じなかった。9日午後までに、平和維持部隊によるパトロールは許可され、ロイ事務総長特別代表も国連施設へ無事戻った。

 10日に戦いが再発したことで、両派の戦闘は一気にエスカレートした。

大統領派と副大統領派の戦闘

「サルバ・キール大統領を支持する政府軍は、ジェベルにあるマシャール派の拠点を武装ヘリコプターで爆撃、重砲で爆撃し、戦車も展開している」と、マシャール派の広報担当ジェームズ・ガデット・ダクは現地時間10日の正午ごろ、フェイスブックに投稿した。

 政府側のルル・ルアイ・コアング報道官は、10日の戦闘には「重砲や小型の武器による攻撃」があったと認めたが、「なぜ、だれが、戦闘を始めたかは把握していない」と述べた。

 南スーダンが内戦状態に陥ったのは2013年12月。数十年間断続的に続いた2度の内戦を経て、2011年7月にスーダンから分離独立を果たしてからわずか3年以内のことだった。独立前の内戦中、キールとマシャールは協力関係や敵対関係を繰り返しながら、最終的にアメリカ主導の和平プロセスの下で結束し、その際に設立したスーダン人民解放運動(SPLM)が2011年の分離独立によって自治政府を担うことにつながった。キールが大統領、マシャールは副大統領にそれぞれ就任した。

【参考記事】スーダン南部、独立後の国名も重要

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中