イギリスの「モデル」、ノルウェーはなぜEU非加盟?
人口520万人の小国ノルウェー。EUに加入せず、「幸福な国」「福祉国家」など様々な世界ランキングでトップを飾る背景には、豊富な石油・天然ガス資源がある。「北欧」という一言でまとめられやすいが、ノルウェーは「石油資源でお金持ち」という点で、他国とは大きく異なる。石油資源の富で苦労を知らずに育った現在の若者は、「オイル世代」、「オイルの子どもたち」と呼ばれる。どれだけ国民の行動や考え方に影響を与えているか、ノルウェーのことは、石油からの富を抜きにしては語ることはできない。
「ノルウェーは帝国ではありません。小さな国なので、他国に物事を決められることに慣れています。EUの単一市場にアクセスできることが、どれだけ大事なことか。石油のおかげで好景気が長く続いたため、ノルウェー人はこのことを忘れがちです」(ノルウェー首相 6月23日 Dagsavisen)
しかし、石油・ガス資源も永久には続かない。「第二のオイル」を探せと、国を支える新しい産業開発に政府は必死だ。ロシアとの緊張関係もある。良い国際関係を構築できなかった時、「なにかあった時に、助けにきてくれる友達」はどれほどいるだろうか。
ノルウェーでは、国会が大多数でEU賛成でも(2大政党は賛成派)、国民投票では反対となる可能性が高く、EU加入を問う国民投票がまた本格的な議論となりそうな空気は今はない。代わりに別の動きがある。
深い愛国心と、他国の支配を拒む。EU非加盟は、ノルウェー人のアイデンティティ?
Brexitへの関心はノルウェーでも高く、関連イベントが多数開催されている Photo:Asaki Abumi
小政党・左派社会党はEU反対派で、今回のBrexitの騒ぎに便乗して、ノルウェーモデルとされるEEA(欧州経済地域=EUにノルウェー、アイルランドなどを加えた単一市場)の新しい協定の形を提案している。党首のリースバッケン氏(写真、壇上左より2人目)は、Brexitに関する討論会の終了後、取材で国民性について触れた。「ノルウェー人は、支配されることを嫌がりますからね」。
「他国からコントロールされたくはない」。これは、ノルウェー人の口からEUに関してよく出る言葉だ。他国からの管理を拒むノルウェー人の考え方には、歴史が関係している。400年に及ぶデンマークの支配を得た後、ノルウェーはスウェーデンとの連合に向かった。連合同盟が解消されたのは1905 年。やっと自由を勝ち取った小国ノルウェーの国民の愛国心が、際立っているのはこのためだ。