最新記事

ベネズエラ

「セルフ・ダンピング」で苦境に陥るベネズエラの食料輸入事情

2016年6月20日(月)12時28分
野田 香奈子

 政府もこの問題を忘れているわけではない。馬鹿げた根拠に基づいて最高裁によって承認された経済緊急事態宣言が意味するのは、つまるところ、政府が問題に気づいてはいるが、政府の直感は誤った政策で対応する方向に向かっているということだ。この宣言により、政府は食料の生産と流通に関連したすべての資産を没収する権限を与えられた。壮麗な独裁体制の用語を使えば、「必要なあらゆる措置を講じる」ための権限ということだ。

 輸入削減の結果は惨憺たるものだ。人々は生活必需品が買えることを期待して店に何時間も列をなしている間にも、食料の数も種類も減り続けている。最後の手段として、自生するトロピカルフルーツを頼りにする人や、さらに困窮した人の中にはゴミ箱を漁る人も出てきた。食料を要求する街頭抗議が自然と起きるのも、店や食料運搬車の襲撃も、もはや日常茶飯事だ。

 政府による最新の計画は、店やスーパーを完全に無視して、直接食料を人々の家庭に配達するというものだ。CLAPという名前で知られる食料配給隊が、先日から幾ばくかの商品が入った袋の配達を始めた。だが、CLAPの職員が自分たちのために食料を取っているとか、配達される食料が少なすぎるとか、配達の頻度が少なすぎるとか、あるいはごく一部の人にしか行き渡っていないとか、不満の声はすでにたくさんあがっている。

 食料危機に対抗するのに、いつものチャベス派の策略では役に立たない。チャベス派は追加の輸入品のために米ドルを印刷することはできないし、私企業を収用したところで食料生産が増えるわけではないからだ。さらに、現在我々が直面している外的ショックの規模を考えると、どう考えても(はい、ご一緒に)「ベネズエラの食料事情は人々が自覚している以上に悪化するだろう。」

【方法論について】:
「食料輸入」は、国家統計院の報告の通り、ベネズエラの関税コードのチャプター1から23に含まれるものすべてと定義し、チャプター14とチャプター22のアルコール飲料は除いてある。国家統計院の対外貿易データは1998年か10から2014年10月までしか入手できないので、2014年11月および12月は推定値である。

※当記事は野田 香奈子氏のブログ「ベネズエラで起きていること」の記事を転載したものです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中