サンダース支持者はヒラリーに投票するのか? しないのか?
公共ラジオ放送NPRのリポートは、サンダース現象の二面性をこう説明する。「サンダースの選挙キャンペーンは、多くの面で愛の革命であり、団結、多様性、すべての人の繁栄のメッセージでもある。だが、この表層の下にあるのは、(愛の革命と)同レベルの怒りの行使としてのサンダース・ムーブメントだ」と。
「時間がたつにつれ、サンダース現象の(怒りのムーブメントの)面が自明になってきた。サンダースの対戦相手である(ヒラリー)クリントンだけでなく、彼女が属している党、彼女の報道をするメディア、そして、サンダースの支持者の多くが信じるところの不正に操られた選挙システムに対する明白な怒りだ。」
この怒りの行使を繰り返した結果が次の現象だ。「強固な支持者にとって、バーニー・サンダースは真実であり光である。彼らの瞳からそれが読める。だが、それだけでなく、彼らにとってヒラリー・クリントンは嘘と闇なのだ」
「BernieOrBust(バーニーでなければ、破壊)」と唱えるサンダース支持者は、ヒラリーを「嘘と闇」の権化と信じきっている。ヒラリーに投票しない理由は、彼女が「嘘つきで誤魔化し屋、ウォール街支持、石油ビジネス支持、私立刑務所支持、(シェールガス採掘の)水圧破砕法支持、モンサント(遺伝子組み換え食品の大企業)支持、上位1%の高収入者支持、プログレッシブ派のリベラルではなくマイルドな共和党にすぎない、犯罪者(電子メール疑惑)でもうじき逮捕される」からだと説明する。
だが、これらの理由は表層的なもので、「ヒラリーには絶対投票しない」本当の動機はNPRのリポートにもあるように「陰謀説」を基づいた強い怒りだ。大差をつけてヒラリーが予備選で勝利したのに、サンダースの熱心な支持者がそれを認めないのは、「予備選で実際に勝ったのはサンダースなのに、民主党全国委員会が八百長でヒラリーの勝利を決めた」と信じているからだ。「ヒラリーには勝たせたくないから、トランプに投票する」という人までいるのは、そのせいでもある。
だが、たったひとつの事件で、強い信念が変わる可能性はある。
ワシントンDCの予備選の2日前に起こったアメリカ史上最悪の銃撃事件はその一つだ。
フロリダの有名なゲイ向けナイトクラブで、49人が殺害され、53人が負傷した悲惨な事件の犯人は、両親がアフガニスタン出身の移民で、自分もイスラム教徒だった。
イスラム教徒の入国禁止を唱えていたトランプは、ここぞとばかりに自分の先見の明をアピールし、イスラム教徒と移民への差別発言、オバマ大統領の背信行為まで匂わせた。