三菱東京UFJの資格返上、マイナス金利封印観測を誘発
メガバンクから地方金融機関まで幅広く、マイナス金利への抵抗感が強い背景としてある大手銀関係者は、1)当座預金の一部へのマイナス金利が金融機関にはペナルティ的色彩が強い、2)長期金利のマイナスに代表されるイールドカーブ全体の低下で収益が圧迫されている、3)短期間でマイナス金利が終了する可能性が不透明──と指摘する。そのうえで「デフレ脱却のために貸し出しを増やそうという空気はない」と話す。
振り返ってみると、三菱東京UFJフィナンシャル・グループの平野信行社長が今年4月、都内の講演でマイナス金利は「銀行業界にとって短期的には明らかにネガティブだ」と批判したのも、今回の決断への伏線だったのではないか、との声が金融界から出ている。
日銀はきっぱりと否定
しかし、日銀内では、こうした見方をきっぱりと否定する声が圧倒的に多い。同行が離脱しても、国債市場や日銀オペへの影響はなく、むしろ国債から他のリスク資産へのポートフォリオリバランスが期待できるとの立場だ。
そのうえで、今後も必要と判断すれば、金利、量、質の「3次元」でちゅうちょなく追加緩和を断行していくとのスタンスを強調している。
また、ある大手銀幹部は、三菱UFJがPDから抜けても、応札義務に応じる分量が全体の88%から84%に低下するだけで「大騒ぎする必要はない」と断言。そのうえで「日銀の金融政策を制約することにならない。市場がそのように誤解するなら、日銀が動いてくる可能性が逆に高まる」と警戒感を示している。
先の国内銀関係者は「直近では6月、7月の日銀金融政策決定会合における追加緩和期待は、かなり低下していた。しかし、三菱UFJ銀の決断を受け、再び関心が高まってきたのは間違いない」と述べている。
(竹本能文 伊藤純夫 編集:田巻一彦)