最新記事

北朝鮮

習近平はなぜ北朝鮮高官と会談したのか?――その舞台裏を読み解く

2016年6月3日(金)17時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

 実は北朝鮮と外交関係を結んでいる国は意外と多いのだが、アフリカには軍事的に北朝鮮と協力的な国が少なくない。中でもウガンダとかエチオピアなどは軍事同盟を結んでいるに等しいくらいの軍事的および経済的に友好的な関係にあった。中国では明確に「北朝鮮の軍事盟友国」という言葉で位置付けているくらいだ。

 だというのに、朴槿恵大統領は、わざわざ際立った親北朝鮮国家を狙い撃ちして歴訪したのだ。5月25日からエチオピア、ウガンダ、ケニアなどを歴訪したあと、フランスに向かった。

 大きな変化はウガンダを訪問していたときに起きた。

 韓国の「中央日報」は、ウガンダのムセベニ大統領が29日、「北朝鮮との軍事協力を断絶する」旨の発言をしたと、韓国の外交安保関係者が述べたと報道したのだ。するとフランスに向かう朴槿恵大統領に対する牽制か、フランスのAFP通信に対してウガンダ政府は「事実ではない。(韓国の)プロパガンダだ」と抗議したとAFP通信が報道。ところがウガンダのクテサ外相が現地メディアに対して「われわれは国連の北朝鮮制裁に基づき、北朝鮮との協力を中断する」と述べたと、今度は韓国の「聯合ニュース」が報じたのである。

 おそらくウガンダのムセベニ大統領としては、これまでの北朝鮮との関係を考えると、そんなにすぐさま世界に公表し、北朝鮮にストレートに伝わるのは、メンツ上困るということだったのだろうと推測される。

 しかし、結果的にウガンダは北朝鮮との軍事協力を断絶したことに変わりはない。

 武器などに関する協力は、韓国と行うことになったようだ。

 中国では「ウガンダは北朝鮮との軍事盟友関係を断絶した」と大きく報じている。

G7オブザーバーより優先した韓国のアフリカ歴訪と米中朝の連鎖反応

 朴大統領は、実はオブザーバーとして日本で開催されたG7伊勢志摩サミットに参加する資格を持っていた。しかし彼女はG7参加の選択を蹴ってアフリカ歴訪を優先した。韓国のメディアでは、朴槿恵大統領がG7よりアフリカを優先したことを批判するメディアもあるようだ。

 しかし、そこには遠大な計画があり、しこもこれにより東アジア情勢に巨大な地殻変動が起き始めたと筆者は見る。

 朴大統領の少し前までの媚中外交は世界の知るところで、中韓蜜月を習近平国家主席も積極的に演じて見せた。なんといっても習氏は北朝鮮を訪問する前に韓国を先に訪問したのだ。

 これは中国建国以来、前代未聞の出来事である。それくらい、韓国を中国の懐に抱え込もうとした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ECB預金金利、夏までに2%へ引き下げも=仏中銀総

ビジネス

米石油・ガス掘削リグ稼働数、6月以来の高水準=ベー

ワールド

ローマ教皇の容体悪化、バチカン「危機的」と発表

ワールド

アングル:カナダ総選挙が接戦の構図に一変、トランプ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 8
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中