閣議決定の骨太方針、子育て支援など安定財源盛り込めず
アベノミクスの成果、定義づくりも難航
骨太方針には、「アベノミクスの成果」として、経済再生の着実な進展による「税収の大幅増加」のほか、歳出面では雇用改善による「失業給付の減少」などと定義されている。
ただ、積極活用派からも「景気による変動分や特殊要因を考慮すると、税収増の全額を使えるとは思っていない」(諮問会議関係者)との基本的な考え方があり、いったい税収増の何割程度が「アベノミクスの成果」といえるかは不明だとしていた。
政府関係者の1人は、今回の決着に関し「骨太方針策定までにアベノミクスの成果と、その認識の共有、安定財源のどれも決まらなかった」と述べ、「来年度予算の概算要求が締め切られる8月末までには、何とか決めることになるだろう」との見通しを示した。
安倍首相は消費税率10%への引き上げを2年半延期することを表明した1日の記者会見で「赤字国債財源で社会保障を充実するような無責任なことはしない」と述べているが、予定されている充実策の財源は、増税延期により4兆円程度不足することになる。
さらに、新たに展開するはずだった子育て支援制度の財源確保に関し、赤字国債なしにどのように手当するかも、骨太方針に盛り込めなかった。
その点については、政府内にも「経済財政運営と改革の基本方針」と言えるのかどうかと、疑問視する声もある。
東京大学大学院の福田慎一教授は「アベノミクスの成功とは、10年後に期待が持てる政策かどうか、みなが見ていたが、現実にはそうなっていない」と指摘している。
今年に入って企業活動や個人消費が、停滞感を強めている。その結果、成長期待や税収が昨年までと同じトレンドで増えないリスクが高まっているとも言える。
子育て支援など将来不安の解消につながる政策も、財源難という状況を打破しなければ、かえって将来に対する期待が委縮する展開もありえる。
(中川泉 編集:田巻一彦)