ドナルド・トランプの不介入主義は正しい
トランプは過去の過ちから学習しない人々を、心底軽蔑しているのかもしれない。いい例が、イラク戦争やリビア内戦だ。リビアでカダフィ政権が倒れた後の2011年8月、国際政治学者のアン・マリー・スローターは「リビア軍事介入の懐疑論者はなぜ間違ったか」と題した記事で、軍事介入の成功を誇った。だがリビアの混乱は収まるどころか内戦が続き、ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)の伸長を許した。以来彼女は口を閉ざしたままだ。
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バラク・オバマ米大統領の外交顧問だった米国連大使サマンサ・パワーは介入がすべて悪であるように誇張すべきではないと言っているが、それは誤った建策ばかりをしてきた責任を逃れたい一心からだろう。
大統領としての資質は疑問
重要なのは、イラクへの軍事介入が何をもたらしたかを冷静に考え直すことだ。数千の米国民の命を犠牲にし、宗派間の対立や自爆テロで多くの血を流した。何十万人ものイラク人の命を奪い、何兆ドルもの金を浪費したうえISISの台頭を許し、キリスト教徒のコミュニティーは破壊され、イランの影響力が増大した。それでもなお誤りを認めようとしない保守派のエリートたちの意見に何の価値があるだろう。
ドナルド・トランプの大統領としての資質を不安視する理由はいくらでもある。だが、長年他国への軍事介入を支持してきたワシントンの政治エリートを排除するという点で、トランプは正しい。これまでアメリカは、尊い人命や莫大な資金、国際社会での信用や影響力など、あまりに多くを犠牲にしてきた。次期大統領は、同じ過ちを繰り返させようとするエリートアドバイザーを断じて拒むべきだ。
Doug Bandow is a senior fellow at the Cato Institute, specializing in foreign policy and civil liberties.
This article first appeared in the Cato Institute site.