最新記事

オピニオン

ドナルド・トランプの不介入主義は正しい

2016年5月20日(金)19時52分
ダグ・バンドウ(米ケイトー研究所シニアフェロー)

 トランプは過去の過ちから学習しない人々を、心底軽蔑しているのかもしれない。いい例が、イラク戦争やリビア内戦だ。リビアでカダフィ政権が倒れた後の2011年8月、国際政治学者のアン・マリー・スローターは「リビア軍事介入の懐疑論者はなぜ間違ったか」と題した記事で、軍事介入の成功を誇った。だがリビアの混乱は収まるどころか内戦が続き、ISIS(自称「イスラム国」、別名ISIL)の伸長を許した。以来彼女は口を閉ざしたままだ。


【参考記事】米軍史上、最も不人気な戦争が始まる?

 バラク・オバマ米大統領の外交顧問だった米国連大使サマンサ・パワーは介入がすべて悪であるように誇張すべきではないと言っているが、それは誤った建策ばかりをしてきた責任を逃れたい一心からだろう。

大統領としての資質は疑問

 重要なのは、イラクへの軍事介入が何をもたらしたかを冷静に考え直すことだ。数千の米国民の命を犠牲にし、宗派間の対立や自爆テロで多くの血を流した。何十万人ものイラク人の命を奪い、何兆ドルもの金を浪費したうえISISの台頭を許し、キリスト教徒のコミュニティーは破壊され、イランの影響力が増大した。それでもなお誤りを認めようとしない保守派のエリートたちの意見に何の価値があるだろう。

 ドナルド・トランプの大統領としての資質を不安視する理由はいくらでもある。だが、長年他国への軍事介入を支持してきたワシントンの政治エリートを排除するという点で、トランプは正しい。これまでアメリカは、尊い人命や莫大な資金、国際社会での信用や影響力など、あまりに多くを犠牲にしてきた。次期大統領は、同じ過ちを繰り返させようとするエリートアドバイザーを断じて拒むべきだ。

Doug Bandow is a senior fellow at the Cato Institute, specializing in foreign policy and civil liberties.
This article first appeared in the Cato Institute site.

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国国防相、汚職調査の対象に 3代連続=FT

ビジネス

英自動車業界、EV販売義務化で2024年の負担は7

ワールド

日米経済関係、事案ごとに総合的に判断し適切対応=林

ワールド

新興国市場、25年は厳しい状況 米中の不確実性で=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老けない食べ方の科学
特集:老けない食べ方の科学
2024年12月 3日号(11/26発売)

脳と体の若さを保ち、健康寿命を延ばす──最新研究に学ぶ「最強の食事法」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳からでも間に合う【最新研究】
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    リュックサックが更年期に大きな効果あり...軍隊式トレーニング「ラッキング」とは何か?
  • 4
    放置竹林から建材へ──竹が拓く新しい建築の可能性...…
  • 5
    「健康食材」サーモンがさほど健康的ではない可能性.…
  • 6
    こんなアナーキーな都市は中国にしかないと断言でき…
  • 7
    早送りしても手がピクリとも動かない!? ── 新型ミサ…
  • 8
    トランプ関税より怖い中国の過剰生産問題
  • 9
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 10
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 1
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 2
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 3
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 6
    寿命が5年延びる「運動量」に研究者が言及...40歳か…
  • 7
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたま…
  • 8
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 7
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 8
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中