最新記事

インタビュー

『海よりもまだ深く』是枝裕和監督に聞く

2016年5月17日(火)16時20分
大橋 希(本誌記者)


――監督をしていなかったら偏屈になったというが、基本的には優しい人間なのでは?

 優しくない。

【参考記事】カトリック教会に盾突いた記者魂

――以前にインタビューしたとき、高校時代の先生と卒業後に手紙のやり取りをしていたという話があった。何か事情があってのこととだろうが。

 それは罪滅ぼしみたいなものだった。先生をばかにしていて、国語の授業中にあからさまに別の小説を読んだり、さぼったりしていた。面談で「是枝さんは僕の授業がつまらないですか?」って聞かれて、「つまらないですね。先生はいつも自分の考えを述べずに、生徒が何か言えば『そういう捉え方もありますね』で済ます。それが面白くない」って言ったの。

 先生は「教師という立場の自分が何か言うことで、生徒の自由な発想を否定したくない」というようなことを、もごもごと言ったわけ。そのときは「こいつ逃げているな」と思った。でも自分が物を作るようになってから、遠藤先生が言っていたのはこういうことかと気が付いたんです。作品のテーマを語ってしまうことが、いかに作品から離れていくかということに。作り手が「この作品のテーマはこうです」と言うことはたぶん抑圧的に働いて、見る人にとってはよくない。

 だから「先生の言っていたことが正しいと分かった」と手紙を書いた。そうしたら返事が来て、作品の鑑賞チケットを送ったら感想が来て、ということがずっと続いている。やっぱり失礼だったからね、自分の態度は。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国務長官、中米5カ国歴訪へ 移民問題など協議

ワールド

EU、ガザ・エジプト国境管理支援再開 ラファに要員

ビジネス

政策金利、今年半ばまでに中立金利到達へ ECB当局

ビジネス

米四半期定例入札、発行額据え置きを予想 増額時期に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ革命
特集:トランプ革命
2025年2月 4日号(1/28発売)

大統領令で前政権の政策を次々覆すトランプの「常識の革命」で世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 4
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 5
    東京23区内でも所得格差と学力格差の相関関係は明らか
  • 6
    「やっぱりかわいい」10年ぶり復帰のキャメロン・デ…
  • 7
    ピークアウトする中国経済...「借金取り」に転じた「…
  • 8
    老化を防ぐ「食事パターン」とは?...長寿の腸内細菌…
  • 9
    フジテレビ局員の「公益通報」だったのか...スポーツ…
  • 10
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果が異なる【最新研究】
  • 4
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
  • 5
    緑茶が「脳の健康」を守る可能性【最新研究】
  • 6
    DeepSeekショックでNVIDIA転落...GPU市場の行方は? …
  • 7
    血まみれで倒れ伏す北朝鮮兵...「9時間に及ぶ激闘」…
  • 8
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 9
    今も続いている中国「一帯一路2.0」に、途上国が失望…
  • 10
    煩雑で高額で遅延だらけのイギリス列車に見切り...鉄…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 5
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 9
    中国でインフルエンザ様の未知のウイルス「HMPV」流…
  • 10
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中