南シナ海仲裁裁判に台湾が横やり、裁定遅延の恐れも
さまざまな政府報告書や声明を証拠として引用し、中華民国国際法学会は常設仲裁裁判所に提出した陳述書のなかで、「太平島が人の居住やUNCLOSの下で経済活動を維持することが可能な島であることは明白だ」と主張している。
ロイターは常設仲裁裁判所に書面で質問を送ったが、回答はまだ得られていない。コメント要請に対するフィリピン外務省からの返事もなかった。
「先祖の所有地を守れ」
台湾のこうした動きは、南シナ海で米中間の緊張が高まるさなかに行われた。中国が人工島建設を進める一方、米国は哨戒活動や軍事演習を強化するなど、両国は同海域の軍事化を互いに非難し合っている。
中国外務省はフィリピンの申し立てによる裁判を受け入れない意向を繰り返し、中国の領土主権を無効とするため、フィリピンが同裁判を利用していると主張。ロイターに対し、「台湾海峡を挟んで両側にいる中国人は皆、先祖の所有地を共に守る責任がある」とファクスで回答した。
中華民国国際法学会は正式には民間団体だが、台湾当局と近い関係にある。馬英九総統はかつて同学会の代表を務めたことがあり、現在も理事会に名を連ねている。今月20日、馬総統は退任し、1月の選挙で圧勝した民主進歩党(民進党)の蔡英文氏が新総統に就任する。
馬総統は1月に太平島を訪問し、同島が島であることを改めて強調した。総統の報道官はロイターに対し、中華民国国際法学会による陳述書提出は台湾当局を代表するものではないとしたうえで、同学会が提出した証拠は当局の公的立場と一致すると語った。
同学会の主張が中国の立場を後押しするかもしれない一方、中国政府は、常設仲裁裁判所が、国際社会における台湾の立場を強化するようないかなる動きに出ることも警戒するだろうと、専門家は指摘する。
中国当局者はこの問題における同裁判所の管轄権とフィリピンの申し立てをする権利について繰り返し反論し、仲裁手続きへの参加を拒否している。