安倍首相が描く伊勢志摩サミット合意、財政出動の合意は無理か
当初、首相官邸や内閣府では「アベノミクスの成果」として、税収の増加分を財源に充てる方針だった。
しかし、財務省を含めた政府内の調整過程で、円安効果や景気サイクルの影響を除くべきだとの意見も出て「政府内に全くコンセンサスが無い状態」(政府関係者)のまま、大型連休明けを迎えてしまった。
円高・株安、税収見積もりの打撃に
また、政府内の一部で懸念されたリスクの一部が、早くも表面化するという環境変化にも直面している。それは為替が円安から円高に転換した場合、税収増から一転して税収減に陥るという懸念だ。
政府の試算では、円相場が10%円高となることで国内総生産(GDP)は0.3%押し下げられる。125円近い円安水準から足元の円相場は20円近い円高が進行しており、年初の政府経済見通し1.7%は1%程度の低成長にとどまるとの見通しもささやかれている。
年初来の円高が企業収益を直撃、株価の下落もあいまって、法人税や所得税は、これまでの3年間のように右肩上がりとはいきそうになく、2016年度の税収も1.7%成長を前提とした当初予算の57.6兆円を確保できない可能性が高まっている。
サミット乗り切りにハードル
さらに情勢を複雑化させているのが、来年4月からの消費再増税を実施するのか、延期するのかという問題だ。
消費増税すれば、来年度に約5兆円を税収増としてカウントできるが、延期ならその分の税収増をどうするのか、という問題が課題として浮上してくる。当然、その判断によって「一億総活躍プラン」の規模や中身にも影響が出てきてしまう。
伊勢志摩サミット前に、安倍首相は主要7カ国の足並みをそろえるという大きな課題と、日本の打ち出す目玉政策の財源問題を解決するという国内での政策調整をクリアする必要性に迫られている。
果たして内外に残る高いハードルを安倍首相は乗り越えることができるのか。その結果は、サミット最終日の27日にはっきりする。
(中川泉 編集:田巻一彦)