最新記事

イラン

【写真特集】街角で会った少女を13年間撮り続けて

2016年5月2日(月)15時55分
Photographs by Takuma Suda

afghangirlphoto160502-3.jpg

10歳。仕事を終えて父親と自宅へ

afghangirlphoto160502-4.jpg

10歳。変顔で笑わせる

 ファラシュテの家族も豊かではないけれど、つつましく幸せな生活を送っているように見えた。だが実際には、イランのアフガン難民には多くの制限が課されている。土地や家、車の所有は禁じられ、働き口は学歴があっても低賃金な単純労働にしか就けない。さらに近年は、イランの失業率が上昇していることもあり、政府はアフガン難民を母国へ帰そうとする政策を取っている。

 そんな不安定な立場に、ファラシュテの父親は危機感を抱いていた。昨年夏、ドイツのメルケル首相が難民の大量受け入れを発表すると、彼はファラシュテの兄2人を連れて、トルコ経由で欧州へ渡った。無事にドイツにたどり着いた父親たちは、今度はファラシュテたち残りの家族を呼び寄せようとした。

 しかし、ファラシュテと母親と姉は、トルコとの国境を越えようとしたところでイランの国境警備隊に捕まり、アフガニスタンへ強制送還された。もう正規のルートではイランに戻れない。ファラシュテたちはパキスタン北西部の危ない部族地帯を経由してイランに再入国した。家族は今、バラバラになっている。

【参考記事】ドイツがアフガン難民の大半を本国送還へ

 20歳になったファラシュテは今、奨学金を受けながら大学に通い、都市計画を学んでいる。小さい頃の夢は絵描きだったから本当は美術を勉強したかったのかもしれないが、奨学金が出る専攻は限られている。都市計画なら経済的負担もないし、デザイン画も描けると、彼女なりに賢明な選択をしたのだろう。楽しそうに学ぶ姿は幼い頃から変わっていない。

 初めて会った日から13年。大人になった彼女はどんな人生の選択をしていくのだろう。それがどんな道であれ、私はこれからも彼女が歩んでいく姿にカメラを向け続けたいと思う。ファラシュテは7歳のときから変わっていない、きっと光を見つけると信じているから。

須田卓馬(写真家)

*今回の写真展では私とファラシュテとの13年間の温かな時間、その関係性が写真に閉じ込められて展示されています。会場でその空気感を味わっていただけたら幸いです。

<開催中>
須田卓馬 写真展
「Fereshteh -13 years in Iran-」
2016年4月29日~5月26日
ソニーイメージングギャラリー銀座

●須田卓馬オフィシャルサイト http://www.takuphoto.net/

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スウェーデン、バルト海の通信ケーブル破壊の疑いで捜

ワールド

トランプ減税抜きの予算決議案、米上院が未明に可決

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、2月50.2で変わらず 需要低

ビジネス

英企業、人件費増にらみ雇用削減加速 輸出受注1年ぶ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 4
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 5
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ...犠牲者急増で、増援部隊が到着予定と発言
  • 4
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 9
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 10
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 9
    有害なティーバッグをどう見分けるか?...研究者のア…
  • 10
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中