最新記事

米共和党

クルーズは「嫌われ者」を卒業できるか

2016年4月26日(火)16時30分
マシュー・クーパー(ワシントン支局長)

 しかもクルーズは、それなりに賢い選挙戦を展開している。トランプだけでなく、民主党のヒラリー・クリントンも彼を警戒すべきだろう。異端のバーニー・サンダースをいまだに倒せずにいるのは、彼女に何らかの弱点がある証拠だ(それでも本選で民主党候補が有利なのは否定できない)。

家族総出のイメージ作戦

 クルーズを甘く見てはいけない。4年前にはテキサス州選出上院議員候補を決める共和党の予備選で、党主流派の推す現職副知事デービッド・デューハーストに競り勝った。当時、「最大の番狂わせ」と呼ばれた勝利である。今回の予備選でも居並ぶ保守派のライバルを蹴落としてレースに踏みとどまり、いよいよトランプとの一対一の勝負に持ち込んでみせた。

【参考記事】「トランプ降ろし」の仰天秘策も吹き飛ぶ、ルビオとクルーズのつばぜりあい

 自分の好感度に問題があることも、クルーズは承知している。自分は「一緒にビールを飲みたくなる人間」ではないだろうが、「酔ったあなたを自宅へ送り届けてあげられる人間」ではあると言ったこともある。なかなか気の利いた言い方だ。

 美形の妻ハイディや5歳と7歳の娘を連れて選挙運動を行っているのも、マイナスにはならないはずだ。先日もCNNの番組に家族で出演し、歌手のテイラー・スウィフトや、ぬいぐるみ作りパーティーの話で盛り上がっていた。素晴らしい。しかし、こうした家族総出のイメージ作戦も、一つ間違えば台無しになる。

 そのCNNの番組で、クルーズは司会のアンダーソン・クーパーに下品な話をしてしまった。最高裁での研修中に、業務上の必要があって女性判事サンドラ・デー・オコーナーと一緒に「ハードなポルノ」を見たという話だ。別に悪い話ではない。しかし自分の娘の前で話すには不適切な話題だった。

 それでもクルーズは選挙に強く、それなりのスキルもあり、民主党にとっては侮り難い共和党候補になれそうだ。もしも彼が共和党予備選で過半数(1237人)の代議員を獲得できれば、本選挙でも過半数(270人)の選挙人を獲得できるかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中