ヒラリー、トランプ圧勝でも予備選の混迷は続く
では、サンダースとその支持者はどうかというと、2008年とは異なる「怨念」が残る懸念がある。まず、政策がまったく違う。民主党内でも、中道実務派のヒラリーと、最左派のサンダースの立ち位置は相容れないほど遠い。また、支持層も違う。サンダースは若者に強く、ヒラリーは中高年に強い。さらにヒラリーは有色人種に強く、サンダースは中西部で強いなど、支持層が「違いすぎる」のだ。
今回のニューヨーク州予備選では、手続きにも問題があった。州独特のルールにより「選挙人名簿への登録は1年前」という規定、そして「国政選挙を2回連続して棄権すると名簿記載が失効」するという規定により、サンダース支持の無党派層がまったく投票できず、一部の報道では10万票が無効になっているという。
この点に関しては、州の規定にはあいまいなところはなく、連邦判事も「投票権確認の仮処分申請」をスピード却下するなど、論争の余地はないようだ。だが、投票できなかったサンダース支持派には、感情的な「しこり」が残りそうだ。
サンダースは、過半数超えの望みがほとんど消えたにも関わらず、幅広く集めた個人献金の資金を使って選挙戦を続けている。例えばペンシルベニア州では「ヒラリーは、悪質な富裕層向け銀行と癒着している」などという、相変わらず一方的な広告を流しているが、この種のキャンペーンが、本選へ向けての党内の結束を傷付ける危険は無視できない。
対する共和党では、ドナルド・トランプ候補が60.1%という得票率で大勝している。だが、2位のジョン・ケーシック候補が25.1%と善戦したこともあって、代議員数92の「総取り」はできなかった。トランプの獲得代議員数は89に終わり、通算で847となった。
この60%超えというのは事前の世論調査を上回るもので、圧勝と言って良いのだが、問題はここで「代議員数3」を落としたことだ。現時点では残り674の中で、トランプが過半数+1の「マジックナンバー1237」を確保するには390が必要。つまり残りの代議員数の60%以上を取らねばならない。
今回の勝利で、この「1237への到達」は理論的には可能になったと言われている。だが、多くのアナリストが試算の結果として指摘しているのは、「マジックナンバーに1人か2人足りない」という結果に終わる可能性が一番高いのだという。そう考えると、今回「3人少ない89に終わった」ことは重大だ。
トランプ陣営もそのことは理解しているようで、「圧倒的1位であれば(過半数に届かなくても)指名されて当然」という主張を強く訴え始めている。だが、共和党の全国委員会は「ルールはルール」だとして、党大会の場での自由投票による「トランプ降ろし」の可能性を依然として追求してくるのは間違いない。