最新記事

インタビュー

『オマールの壁』主演アダム・バクリに聞く

2016年4月19日(火)17時40分
大橋 希(本誌記者)

omar02.jpg

<悲劇の象徴>オマールが登る高さ8メートルもの分離壁はパレスチナの苦悩そのものといえる


――役作りのためにはどんなことを?

 私はイスラエル生まれのパレスチナ人で、この映画に出てくるようなヨルダン川西岸地区に暮らす人々とは状況が違う。それでもパレスチナ人としての責任を感じているし、パレスチナの人々と同じ重荷を背負っているつもりだ。それは私だけでなく両親や家族も同じ。だから、オマールの状況は私にとってまったく遠い話ではなかった。

 西岸の人たちがどんな生活をしているかは知っていたし、自分は経験していないが、すごく共感できた。オマールの状況を想像して、たぶん刑務所の中にいるような生活だろうというのが良く分かった。

 役作りでいえば、撮影前にも撮影中にも監督と、その場面でどんな感情を出したいかをよく話し合った。肉体的な準備はトレーナーについてもらった。かなりハードなトレーニングだったよ。

――オマールはどんな人物だと解釈して演じたのか。

 それは簡単には答えにくいけど......彼は自分に近いところも、まったく違うところもある。人間はみんな内面的な葛藤や苦しみを抱えていると言う意味では近いと思う。

 この映画の核になるのは、オマールの内面の葛藤や悩み。彼はいつも自問して、いろんなことを考えている。演じるということは想像することで、僕はいつも彼のことを想像していた。

 もし自分がオマールの立場で、恋人に会うために毎日、殺される危険を冒して壁を越えなければならないとしたら? 朝起きてシャワーを浴びようとして、水が出ないとしたら? 日常生活で必要最小限なことも西岸では満たされていない。そういう生活はどうなんだろう、と自分に常に問いかけていた。オマールの悩みや葛藤は、パレスチナの悩みであり葛藤なんだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご

ワールド

中国、EU産ブランデーの反ダンピング調査を再延長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中