中国の鉄鋼生産、供給過剰解消までの長い道
地方政府は大量の失業者が出る可能性と鉄鋼メーカーの債務に脅えて「ゾンビ製鉄所」を支える
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4月11日、中国の鉄鋼メーカーが国内の需要低迷を背景に安い鉄鋼を大量に輸出、海外メーカーを脅かしている。写真は大連の鉄鋼工場で3月撮影(2016年 ロイター/CHINA DAILY)
中国の鉄鋼メーカーが国内の需要低迷を背景に安い鉄鋼を大量に輸出、海外メーカーを脅かしている。国際社会は中国政府に余剰生産能力の削減を求めているが、共産党は社会不安を恐れて対策に及び腰で、削減には長年を要する可能性がある。
共産党指導部に近い筋は「(製鉄所の)閉鎖は一日にして成らず。(社会の)安定が最優先課題だ」と述べた。
景気減速で多くの鉄鋼メーカーが多額の赤字を出し、輸出に活路を見出している。2015年の鉄鋼輸出は過去最大に上り、世界の鉄鋼価格が数十年ぶりの安値に下落する主因となった。
インド鉄鋼大手タタ・スチールは、中国製を含む安い輸入品の大量流入が原因で、英事業の一部売却を決めた。
ドイツでは4万人を超える鉄鋼労働者が11日、中国からの輸入製品安売りなどに抗議する街頭デモを行った。
クリントン前米国務長官は同日、「中国がわが国の市場に安い製品をダンピング(不当廉売)してルールを破るなら、責めを負わせる」と、批判の声を強めた。
悪循環
公式データによると中国の鉄鋼生産能力は年間11億トンだが、アナリストの推計では、あと1億トンが違法生産されている。
公式統計では、余剰生産能力は年間3億─4億トンに上り、昨年の輸出は過去最大の1億1000万トンと、英国の年間鉄鋼生産量の約10倍に達した。
余剰生産能力の大半は、2009年に政府が実施した景気対策で鉄鋼需要が急増した結果、生まれたものだ。
中国は2月、5年以内に1億─1億5000万トン分の古い生産施設を閉鎖すると宣言。しかし政府は失業と社会不安を最低限に抑えたい意向で、生産能力は高止まりしそうだ。