予備選で見えてきた「部族化」するアメリカ社会
ルビオのイベントに参加していた60歳前後の白人女性ハイジは、「高等教育を受けたエリート」であり、移民でもある。彼女は、ルビオが力説するように、アメリカとは「移民の情熱と努力が経済を刺激し、アメリカンドリームの実現で成長し続ける国」と語った。さらにハイジは、「私のようにドイツから合法的に移住して市民権を得た者と、不法移民とは違う。アメリカ国民として尊重されたかったら、合法的に来て、国に貢献できる国民になるべき。他人の税金で施しを受けようとする移民は排除して当然」と、移民なのに移民に対して手厳しい。
ヒラリーのイベントで出会ったのは、ハイジとよく似たカテゴリーの60歳前後の白人女性の2人組だ。どちらもシャーロットという名前で高校の同級生だという。ひとりはニューハンプシャー、もうひとりはオレゴンに住んでいる。彼女たちが語るアメリカは、「人種、性、性的指向に関係なく、国民のすべてが平等に扱われ、互いの違いを歓迎できる国」だ。
ハイジとシャーロットたちは、どちらも外国から来たマイノリティである筆者への偏見はなく、フレンドリーだった。ハイジは、iPhoneを取り出して、「ほら見て、素敵でしょう?」と(途中で予備選を脱落した)共和党唯一の女性候補カーリー・フィオリーナと一緒に写っている写真を見せてくれたし、オレゴン州から来たシャーロットも、同じように「ほら、見て」とヒラリーと一緒に写した写真を見せてくれた。
ハイジは、ヒラリーの話題になると「大嫌い!(Eメール疑惑で)逮捕されればいいのに」と顔色が変わる。シャーロットたちは「女性のくせに、女性が中絶を選ぶ権利に反対するのって許せないわ」と中絶反対の保守派に対しては痛烈だった。つまり、信念が違っても、人としてはさほど変わらないのだ。
だが、収入格差やマイノリティの増加により、「アメリカはかくあるべき」という定義は、ますます多様化してきている。
ケーシックのイベントで筆者の隣に座った60歳前後の白人男性は、彼女たちとは違った。サンタクロースのような白い髭の彼は、筆者と目を合わせようともしないし、ボディランゲージからは敵意のようなものすら漂ってくる。
質疑応答になって、彼が手を挙げた。