最新記事

【2016米大統領選】最新現地リポート

予備選で見えてきた「部族化」するアメリカ社会

2016年4月11日(月)19時15分
渡辺由佳里(エッセイスト)

「僕の職場にH1Bビザ(専門職向けの就業ビザ)の外国人エンジニアがいた。ビザは一時的な処置のはずだ。それなのに、僕が職を失って、奴は10年残っている。これは、おかしいじゃないか? 近所には、だんだん外国人が増えてきて、町の雰囲気も変わってしまった。あなたが大統領になったら、アメリカ人が外国人に職を取られないようにしてくれるのか?」。こう恨みを語る男性にとって、アメリカとは「能力にかかわらず白人男性が職を保証されるべき国」なのだろう。

【参考記事】トランプ旋風を生んだ低俗リアリティ番組「アプレンティス」

 ニューハンプシャー州で出会った同世代の人々だけでもこれだけバラエティがある。さらに、第二次大戦後のソビエト連邦との冷戦、公民権運動、女性の人権運動を覚えている世代と、それらが「過去の歴史」でしかない世代では、「社会主義」や「平等」の捉え方が大きく異なる。

 問題は、それぞれに自分たちが考える「アメリカ」こそが「真のアメリカ」であり、ほかの「アメリカ像」を受け入れることができない点だ。同じ「アメリカ像」を持つ人と一緒にいれば心地良いし、安心できる。だから、同じ「アメリカ像」を持っている人々が集まって「部族」を作る。そして、それらの部族を代表するのが、今の大統領候補たちだ。

pereport160411-03.jpg

小規模のミーティングで参加者に語りかけるケーシック(筆者撮影)

 これまでの予備選の出口調査やソーシャルメディアでの発言から、各部族のアイデンティティが浮かび上がってくる。

<トランプ部族>
地方に住む、低学歴、低所得、労働者階級の白人男性。移民とイスラム教徒に敵意を持ち、女性差別も強い。(最近のCNN/ORC世論調査によると、女性有権者の73%がトランプに反感を抱いている)

<クルーズ部族>
中絶や同性愛に強く反対するキリスト教右派、原理主義者。トランプの支持者よりも、教育レベルと収入がやや高めの白人。

<ルビオ部族>(ルビオはすでに予備選からの撤退を表明)
都市に住む、高学歴、高収入、軍事的タカ派の保守。ビジネス優先。成功を収めた裕福な移民。キューバ系アメリカ人。

<ケーシック部族>
政策とイデオロギー上の保守を信じる古いタイプの共和党員。高学歴、高収入の中道右派。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

FRBは当面政策維持を、生産性頼みは尚早=カンザス

ワールド

米雇用統計「素晴らしい」、米は借入コスト減らすべき

ワールド

米が制限順守ならロシアも同調、新START失効でラ

ビジネス

1月米雇用、13万人増と1年超ぶり大幅増 失業率4
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:習近平独裁の未来
特集:習近平独裁の未来
2026年2月17日号(2/10発売)

軍ナンバー2の粛清は強権体制の揺らぎか、「スマート独裁」の強化の始まりか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 2
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 3
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トランプには追い風
  • 4
    がんは何を食べて生き延びるのか?...「ブドウ糖」の…
  • 5
    一体なぜ? 中国でハリー・ポッターの「あの悪役」が…
  • 6
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 7
    【独自取材】「氷上のシルクロード」を目指す中国、…
  • 8
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 9
    まさに「灯台下暗し」...九州大学の研究チームが「大…
  • 10
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 1
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた実験室」に...抗生物質の「不都合」な真実とは
  • 2
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を空中爆破...地上から撮影の「レア映像」を公開
  • 3
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 4
    中国、パナマ運河の港湾喪失でパナマに報復──トラン…
  • 5
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予…
  • 6
    ビジネスクラスの乗客が「あり得ないマナー違反」...…
  • 7
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 8
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 9
    台湾発言、総選挙...高市首相は「イキリ」の連続で日…
  • 10
    【銘柄】「ソニーグループ」の株価が上がらない...業…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 3
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 4
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 5
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 6
    ウクライナ戦闘機「F-16」がロシア軍「シャヘド」を…
  • 7
    「最恐」恐竜T・レックスの定説を覆す新研究が
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中