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パナマ文書に激怒するアイスランド国民の希望? アイスランド海賊党とは

2016年4月11日(月)15時45分
Rio Nishiyama

オンラインプラットフォームを使った、政策決定プロセス

 では、アイスランド海賊党の実際の政策決定プロセスはどのようなものなのだろうか?

 政策決定には党のオンラインプラットフォームを使い、すべての公式な政策決定は、このプラットフォームの多数決投票によって決められなければならない。

 サイトに行くと、左上のコラムに「政策一覧」(外交、安全保障、社会保障、教育、...など)、右のコラムに「すでに議論が終了し、決定が下された政策」、左下のコラムに「現在議論中の政策」と分かれている。


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 政策決定のプロセスはこうだ。

 まず、とある政策について議論したいひとは誰でも(党員でなくても)、党の理事会(Executive board)に申請し、政策会議をひらくことができる。政策会議には誰でも参加できる。その会議で当該の政策は5%以上の支持を得なければならない。

 5%以上の支持を得た政策は、今度は上記のオンラインプラットフォームで議題として提示される。ここであらためて議題は掲示板で議論されることになる。政策会議は党員でなくても発議することができるが、オンラインプラットフォームでコメントしたり投票したりするには、党員である必要がある。

 興味深いことに、アイスランドではマイナンバーに似た個人識別共通番号制度があり、このプラットフォームはその共通番号リストと連動しているため、党員になる=オンラインプラットフォームに登録する=アイスランド市民として認証される、がひとつの行為でつながっている。これによって匿名による荒らしや不正投票を防ぐことができる。

 党員としてシステムにログインすると、コメント機能や投票機能が表示され、設定された期間内であれば自由にコメントしたり、投票したり自分の投票を変えたりすることができる。

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 これは現在議論中の政策。「環境」分野の「中央高地保護」に関するものだ

 「オンラインプラットフォームによる政策決定」という仕組みは、ドイツ海賊党で導入されたリキッド・フィードバックに似ているが、こちらは投票を委任できないという点で「液体民主主義」ではない。また、ドイツ海賊党では液体民主主義の導入を通した直接・間接民主主義のクオリティ向上が一時おおきなトピックになっていたのと異なり、アイスランド海賊党の重点はそこにはないのだという。

 アイスランド海賊党員で市議会評議員のある人によれば、

 「アイスランド海賊党がいま目指しているのは直接民主制の実現ではなく、『権力を持つ人と持たざる人の力の差を是正すること』だ。だからこそ、個人を権力の濫用から守るためにプライバシーの保護が必要だし、権力をひとびとと同じレベルに下げるために、政治の透明性が必要なんだ」

 そしてオンライン・プラットフォームはその「政治決定の透明性」のために必要不可欠なのだという。

 今回の「パナマ文書」のリークによって政治腐敗の問題点や政治の透明性の必要性がさらに取り沙汰されることは間違いなく、支持率の上昇も確実視されるアイスランド海賊党。今後のアイスランド政治から目が離せない。

[筆者]
Rio Nishiyama
元・欧州議会インターン。1991年生まれ。早稲田大学社会科学部・政治経済学部中退。オランダ・マーストリヒト大学卒業。2011年、スウェーデンのルンド大学に留学時海賊党を知りその後活動に関わることになる。大学卒業後、ブリュッセルの欧州議会にてドイツ海賊党議員のもとで半年間のインターンを経験。その後帰国。専攻はEU政治とEU著作権法改正プロセス。(Website: https://ldjp.wordpress.com/)

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